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お迎へしてから二ヶ月と十日。次男が突然、櫻姫を撫でる事に成功した。
おとなしく撫でられるだけではなく、頸やおでこを掻けと催促をしてゐた。
さう言へば、我が家にお迎へして直ぐの頃、家族全員がシャーシャーパンパンされてゐた時、次男だけは匂いを嗅がれただけだつた。
次男はいつも特別扱ひされる。
寧々の時もさう。
家族が寝てゐて起こしに来る時、私と夫は起きるまで鳴かれる。
長男などは枕上の顔の際を前足で掘られたり、頬骨に前足を揃へて乗せられる。
(狭い部分に体重を掛けられるのはとても痛いらしい。)
次男の場合、そんな事は一度も無く、起きるまでベッドの足許で一緒に寝てゐる。
私も別の意味で特別扱いされてゐる。
ご飯が欲しい、トイレが汚れてゐる、玩具で遊んで欲しい等、他の家族には綺麗な声で愛らしく鳴いて催促するのに、私の場合は只ぢつと見て来るだけ。
知らん顔をしてゐると、カップボードや鏡台の椅子に上がつて目線を合はせてくる。
急を要する場合は鳴くけれど、いつも「早くして。」と言はぬばかりに見つめてくる。
私は何の催促か判るから、鳴くまでも無いと思つてゐるのだらうか。
可愛い声でおねだりされる家族が羨ましい。
ふと、赤ん坊の世話をしてゐた時の事を思ひ出した。
いつも、自分がかうして貰つたら心地良いだらうなと思ひながら世話をしてゐた。
寒い(暑い)とか、寝起きはトイレ行きたいよなあとか、喉が渇くなあとか、そろそろお腹が空いたなあとか。
今でも赤ん坊の泣き声を聞くと、ああ、お腹が空いたね等と考へて笑つてしまふ。