「あの、私、今2階にいます。2階の奥の部屋にいます。」
へっ? 思わず天井を見上げてしまった。2階にいるの? ちゃんと鍵をかけて出かけたはずだし、帰ってきた時に鍵を開けて入ったよね。でも自信無いよ。開けっ放しだったかも。
女性は続けて言った。
「アダチさんから電話番号聞いたんです。それで電話したんです。 今、2階にいますから。」
アダチさんという知り合いは確かにいるけど、最近は付き合いは無い。
あの~、電話番号間違えていませんか、と私が言ったら
「いえ、間違えていません。アダチさんに何度も聞きましたから。今、2階にいるんです。奥の部屋です。」
ちょっと待ってよ~。怖いよ~。このまま家から飛び出して車の中に避難したほうがいいかな。だけど猫達に危害が及んだらどうする?
この電話は絶対に間違い電話だと思うから、もう一度かけ直してみてくださいと言って、相手の返事を待たずに切った。
それから、玄関の傘立てから傘を1本取り出して、すべての部屋、すべてのクローゼット、風呂からトイレまで全部見て回った。
異常無し! あ〜、良かった。
たった1本の電話で、けっこう恐怖のどん底に叩き落とされた。知らない人が2階の部屋にいるのかと思ったら、心臓がバクバクしてしまった。
私と一緒に家中見て回ってくれたトラの存在が、心強かったな。
電話はその後もかかってきたが、もちろん出なかった。
用心棒のトラ
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