壺売りと少年

2014年6月24日(火) 233 / 4

ある小さな国の小さな市場町。
決して裕福ではないけれどいつも明るい声と活気に満ち溢れています。
そんな市場の片隅に年老いた壺売りがいました。

今では時代遅れになってしまった手作りの壺。
売れ残りばかりでその日の食事代を稼ぐのもやっと。
しかし老人はいつも笑顔で市場を眺めていました。

ある日、老人のもとに一人の少年がやってきました。

少年はポケットの中からしわくちゃのお金を取り出しこう言いました。
「お小遣いをためてきたんだ。このお金でそこの大きな壺と小さな壺、一つづつ買えるかい？」

にっこり笑った老人は少年にこう聞きました。
「こんな大きな壺何に使うんだい？」
少年は少し照れながらこう答えました。
「おいら、旅に出るんだ。旅の途中では沢山の優しい人たちや幸せにであうだろ？そんな幸せや優しさをこの壺に入れるんだ。だけど悲しみや憎しみは少ない方がいいだろ？だから小さな壺にしまってしまうのさ。」

それを聞いた老人は優しく少年に語りかけます。
「お代はいただかないよ。でも、一つだけお願いがあるんだ。」
少年は不思議そうに首を傾げながらも小さく頷きました。
すると老人はにっこり笑ってこう言いました。
「小さな壺には優しさや幸せを、大きな壺には悲しみや憎しみを入れておくれ。」
少年は少し難しそうな顔をすると。
「それじゃあ幸せや優しさはこぼれちゃうじゃないか・・・」
まだ何か続けたそうに話す少年に老人は話を続けます。
「それで良いんだ。小さな壺はすぐにいっぱいになって溢れてしまうだろ。君が旅を終える頃には少しの幸せと少しの優しさだけが壺に残るけど、周りをみてごらん世界中が君が溢れさせた幸せと優しさに埋まっているから。悲しみや憎しみは決してあふれさせてはいけないんだよ。」

さっきまで不思議そうな顔をしていた少年は満面の笑みを浮かべると、二つの壺を抱えて市場を後にしました。

私はこの日記に小さな壺を置こうと思います。
ネコジルシが幸せと優しさで溢れるように・・・

0 ぺったん

ぺったんしたユーザ