散歩して お風呂に入って かくれんぼをするリュック。
リュックは、ボクが最近飼い始めた黄色と茶色のシマシマの猫の名前。
「かわった名前ね」
ってみんなは言うけれど、リュックは気に入ってくれている、とボクは勝手に思っているんだ。
ボクはももこ。小学3年生。女の子がボクっていうのは変?いいじゃない。ずうっとボクって言ってきたんだから。あ、ボクのことよりもこれはリュックのお話なんだ。
長い休みにボクはパパちゃんと旅行した。
東北地方っていうところを1週間もかけて車で走ったんだ。明日はお家に帰るという日、パパちゃんの車はまっすぐな道を快調に走っていた。道の両側には、ずうっと菜の花が咲いていて
「こんなにまっすぐで長い道は初めてだね。日本じゃないみたいだ」
と、パパちゃんはすごくうれしそうだったんだ。
そんな時、ボクは菜の花のすぐ近く、道の端っこをトコトコと歩いている猫を見つけた。
「パパちゃん止めて!」
車は猫を少し通り過ぎて止まった。猫は歩くのをやめて車の方を振り向いていた。ボクはそっとドアを開け、ゆっくりと猫に近づいていった。
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猫は顎を上にあげるようにしてボクを見つめた。目がまんまるだった。パパちゃんも車から降りてきて
「猫かあ。びっくりしたよ。ももちゃんが急に止めてっていうんだもの」
と言った。ボクは静かにしてってパパちゃんを睨んだ。
「君、どこまで行くの?」
って聞きながらボクがしゃがみこむと、猫はお行儀よく座りなおして
「ニャン」
と挨拶したんだ。
「ねえ、パパちゃん、連れて帰りたい」
とボクは言った。
「うーん、でもさあ、ももちゃん、これから東京まで車で帰るんだよ。猫って車に乗るかな・・・わあっ」
パパちゃんが言い終わらないうちに猫はパパちゃんの足を駆け上がり、背中に飛びついた。パパちゃんの肩に手を乗せて背中に張り付いている猫はまるでリュックみたいだったんだ。
「名前はリュックに決定。いい名前でしょ?きょうから君はリュックだよ」
ボクはパパちゃんの背中からリュックを抱き上げた。
「だからさぁ、ももちゃん、猫って車に乗るかなあ?」
パパちゃんがあまり猫が得意じゃないことは知っていたけれど、そんなのは無視してボクは車のドアを開けた。するとリュックはボクの腕から車のシートにスタっと飛び降りて、そしてせっせと毛づくろいを始めちゃったんだ。
それからは、トイレやご飯を買ったりとバタバタしたけれど、車の中でのリュックはボクの膝の上で居眠りしたり、パパちゃんの運転や窓の外の景色を見つめたりしながらのんびりと過ごしたんだ。
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高速道路の最後の休憩所で、ボクはリュックを抱っこして車から降りた。いくら車が好きなリュックでも疲れたんじゃないかなって思ったから。ボクはリュックをしっかりと抱きしめて、芝生の上のベンチに座ったんだ。すると身体の大きなおばさんが近づいてきて優しそうな顔でリュックを覗き込んだ。
「まっ、きれいな猫ちゃんね。美人さんだわ。うちにも3匹いるのよ」
じつはボクは知らない人とおしゃべりするの苦手なんだ。なんとかっていう病気なんだって。だけど、リュックのことを褒めてくれたおばさんにはご挨拶をしなくちゃって思った。
「ありがとう。おばさん。リュックだよ」
「リュックちゃんっていうの」
おばさんはもう一度かわいいと褒めてくれて、それからバイバイって言った。少ししてジュースを持ったパパちゃんがやってきて
「ねえ、ももちゃん、おばさんと何かお話してたの?」
ってすごくうれしそうに訊いたんだ。
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それからまたしばらくの間、ボクとリュックは車で眠って、そして無事お家までたどり着いた。
「お帰りなさい・・あら?その猫ちゃんどうしたの?」
出迎えたママちゃんも少しびっくりしていたけれど、説明はパパちゃんに任せて、ボクは
「ママちゃん、リュックだよ。よろしく」
ってだけ言ったんだ。
こんなふうにしてボクとリュックの一緒の生活が始まった。
次はリュックの大好きな散歩のお話をするね。リュックの散歩はちょっと変わってる。チワワとかみたいにハーネスとリードをつけて歩くんだよ。そして散歩で出会ったお友達は「おっきいクン」。
つづく
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このお話はだいぶ前に書いた創作童話です。いまはないのですがHPに掲載したり、某童話賞に応募したりしましたがボツ(笑)。ネコジルシにこさせていただいて、また少し創作意欲がわいてきましたので、少しずつ掲載していきたいと思います。
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