近頃、椰の仔猫時代をよく思い出します。
我が家へ連れて帰ってくる最中、車の中、私の膝の上で、シッコとコロコロウンチをしてくれやがりました、最初からふてぶてしい猫でした。
実は仔猫時代の写真はまったくありません。
「写真を撮ると猫が家を出ていく」という言い伝えがうちの地域にはありましたので、怖くて撮れなかったんですね。
その後、「この子、絶対出ていかれへんわ」と確信を持てるようになってからは、写真一杯あるんですけど。
仔猫の頃の姿は、17年前でもはっきり覚えています。
仔猫時代は本当にフワフワの長毛で、尻尾なんかリスみたいに大きくて、成猫になればどんなゴージャスな猫になるんだろうと期待していたのですが、体は成長しても毛はあまり成長せず、中途半端な長毛、尻尾は毛は長いけど少ないのでサンマの開きみたいになっていました。
後、肩のあたりだけ、何故か毛が短くて、たてがみも中途半端になってしまいました。
ペルシャ系なので、鼻ペチャで、大人になってからも顔は仔猫時代とあまり変わりませんでした。
仔猫の頃は、電池が切れたみたいに、ストンと寝落ちをよくしてました。
遊んでる最中、オモチャ咥えたままとか、毛繕いの最中、そのままの姿勢でとか。
ララの仔猫時代は小学校に上がる前ということで、ほとんど覚えていなかったので、仔猫がこんなに華奢なのかと驚きました。
元々、猫って骨組みが細いですが、仔猫は本当に華奢で、割り箸より簡単に折れそうな骨だと、触れる時はいつも慎重でした。
ひとが昼寝をしようとすると、横にひっついて一緒に寝たがるので、寝返りを打って潰しちゃいけないとお腹の上に乗せて寝るようにしていたら、体重4キロを超すようになっても、寝転んだらお腹に乗ってくる子でした。
何故か、布団をかぶっていないとちょうどお腹の上に乗るんですが、布団をかけていると、掛布団の上に乗っていいと思うらしく、掛布団の縁ギリギリに乗ってきました。
で、私が掛布団は口元までかける派なんで、喉に椰の体重がかかり、窒息の危機もしばしばでした。
一応、たてがみがあるので、貧相なたてがみが擦り切れてはならないと、首輪をしていなかった椰ですが、仔猫時代はどこにいるのかわからないと困るということで、鈴をつけていました。
何せ、17年前の田舎の話で、仔猫なんてそれから更に17年前にしか接していないということで、大きな音の鳴る鈴のついた首輪にしてました。今だと虐待ですね。
更には、小さめの首輪を父が飼ってきたのですが、それでもブカブカだというので、首輪を切って縫いつけるという、今思えばゾッとするような真似をしていました。
何事もなく、本当に良かったです。
そうやって所在がわかるように鈴をつけていたのに、1度、行方不明になったことがありました。
もしかして外に出たのか、いやそんなはずはないと、母と必死で家の中を探し回ったら、6月か7月の暑い時期だったのに、ナイロン袋を突っ込んでるストッカーで爆睡してました。
鈴の意味がない……本当に、役に立たない鈴を危ないつけ方してて、何事もなく過ぎて良かったです。
椰はよく毛繕いをする子でした。
仔猫時代から、それは念入りに毛づくろいをしてたんですが、逆に毛玉を作ってました。
仔猫時代、胸元の毛繕いをしていて作ってしまった毛玉に引っ掛かった自分の牙を外せず、四苦八苦していたことがありました。
ちょうど我が家が無人になった数時間の話で、最初に帰宅した私が見つけて、慌てて取りました。
その日は、いつもより傍にいたがり、ついて回っていたんで、幼心に怖かったんでしょう。
成猫になってからは、自分で外せるようになりました。
17年。
幾らでも話すことがあります。
彼我の境目がなくなるくらい、私と椰は寄り添い合って生きていました。
椰とふたりきりで過ごした時間は、楽園のようでした。
まだ涙は完全に枯れないし、一緒に死んでいた方が良かったと思う事もあります。はーろがいるから、そんなことは絶対しちゃいけないとわかってるんで大丈夫です。
色んなことのあった17年。
良い事もあったけど、悪い事の方が多かった。
平凡な幸せさえ、私には叶わないのかと思ったりもしたけど、椰がいてくれた。
椰と一緒にいる、それと引き換えにできるものなんか、何もない。じゃあ私は、傍から見れば災難続きでも、椰がいる限り、世界一幸せな人間だった。
椰の月命日を数えるのは、今日で終わりにします。
数えることはやめるけど、折々、椰の話題は出てくると思います。
椰を忘れるわけじゃないし、忘れられるはずもない。むしろ、忘れられたほうが楽なのかもしれません。それだけ、椰は私の一部だったから。
でも、ケジメをつける時というのはあると思うのです。
だから、月命日を数えるのは、半年という節目でおしまいにします。
今日のはーろは、タワーでおとなしく寝ています。
私が椰のことを考えている時は、いつも私をそっとしておいてくれます。
我慢してくれてありがとうね、はーろ。
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暑がりだったので、真夏で機嫌の悪い椰です。
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