猫が自分の存在と縄張りを他の猫に主張する行動。またその方法の事を言います。猫のマーキングには大きく分けて、親密度を表すマーキング(頬や顎、尾の付け根などを擦り付ける)と、テリトリーを誇示するマーキング(スプレー、爪とぎ)があります。
これらは全て猫の本能に基づく正常な行動ですが、特に室内をメインとして暮らす猫では、テリトリーを主張するスプレーや爪とぎが問題行動として取られる事が多くなります。
猫が自分の存在と縄張りを他の猫に主張する行動。またその方法の事を言います。猫のマーキングには大きく分けて、親密度を表すマーキング(頬や顎、尾の付け根などを擦り付ける)と、テリトリーを誇示するマーキング(スプレー、爪とぎ)があります。
これらは全て猫の本能に基づく正常な行動ですが、特に室内をメインとして暮らす猫では、テリトリーを主張するスプレーや爪とぎが問題行動として取られる事が多くなります。
猫達は飼い主や仲の良い猫に鼻先から尻尾の付け根までをスリスリと擦り付ける動作がよく見られますね。喉をゴロゴロ鳴らし、目を細めてスリスリされると、もう何でも許したくなってしまう程、人間も目尻が下がるもんです。
この行動の根っこの部分にあるのは、その相手を自分が占有したいという欲求で、他の猫に誇示するよりも自分が擦り付ける相手とより親密になりたいと表現するためのマーキング行動なのです。特に頬にある臭腺から分泌されるフェイシャル・フェロモンには猫を沈静させる効果があると言われています。
スプレーや爪とぎは自分の存在を他の猫に誇示する為のマーキングです。外へ出る猫達は、毎日自分の縄張りをパトロールし、このマーキングが弱くなっているところが無いかチェックをしています。匂いが弱くなっているところにはその上からさらにスプレーをし、自分の縄張りをきっちり誇示していきます。
スプレー、爪とぎに共通するマーキングの仕方に、「より高いところに付けたがる」というのがあります。できる限り高いところにマーキングする事で、自分の存在をより大きく見せるためだと言われています。猫がスプレーをする時に後ろ足をやや伸び上がったようにしたり、後ろ足で立ち上がって背伸びをするように爪とぎをしたりするのはそのためです。
※爪とぎにはマーキングだけでなく、猫のストレスを解消する効果、爪の古くなった角質をはがす効果があります。遊びに夢中になって興奮した時などに突然爪とぎ行為を始めるのは本能的に自分を落ち着かせようとするからだと言われています。
どうしてスプレーという行動があるのか、前述のマーキングについてを読んでいただければ分かったと思います。
それでも、室内で猫と暮らす上で、できればあまりやって欲しくない行為であるのは確かです。特にスプレーのオシッコは通常の物と異なり、かなりキツイ臭いをしています。成分が濃い為にかけられた家具なども腐食を起こしてしまいます。
猫の行動を矯正する時、まず心がけなければならない事は、「猫をしつける」事ではなく「猫にその行動を取らせないようにする」事です。
猫のスプレーは自分のテリトリーを誇示する為だという事はマーキングについてで書きました。それを踏まえると、猫がスプレーをするのは猫が「テリトリーを誇示しなければならない状況」にあるという事になります。
ではどんな時に猫はそういう状況に陥るのでしょう?
多くの場合、猫が環境に対して不安に思っている・満足できていない時にスプレーが起こる事が多くなります。その時に更に叱ってしまうと、ストレスを感じた猫は更に激しくスプレーをするようになってしまいます。まずは猫の環境をよく観察し、不安を取り除く事を考えるようにしましょう。
スプレーというと、「去勢していない雄猫」だけがすると思っている飼い主さんは意外に多いようですが、スプレーは雌雄どちらにもある行動です。
ただし、不妊手術によってスプレー行為は90%位の割合で防げるとも言われています。特に製成熟する前の手術でこの効果は上がると言われています。
逆に、5歳以上のスプレー経験のある猫での手術では、期待以上の効果が上がりにくいとの説もあります(全く効果が無い訳ではありません)。これはスプレーという行為が本能のみではなく日常行為として学習されてしまっている為と見られ、環境によって徐々に減らしていく事は可能だと思われます。
性格的には、独立心が旺盛で気が強く、飼い主への独占欲の強い子がより多くスプレー行為を起こしやすくなります。これは堂々と他の猫を威嚇する猫、という意味だけでなく、逆にたくさんの猫の中で一番弱く萎縮して怖さのあまり周りを威嚇してしまうような猫も当てはまります。
テリトリーの誇示という観点から見れば、これは当然のような気がします。中には飼い主にスリスリするだけでは自分の欲求が満足せず、飼い主にスプレーする子もいるほどです。こういう子は多頭飼いにはあまり向かず、飼い主と一対一の生活ではとても良いパートナーになってくれます。
環境変化が無かったか?トイレはいつも清潔になっているか?神経質な子では、宅配のダンボールひとつ増えただけでもそれがスプレーの標的になる事があります。
スプレーした場所は徹底的に掃除をし、臭いが残らないようにしましょう。
猫の嫌いなものを置いてしまう、人工芝など踏むと不快な思いをする物を置くなど
汚れたらすぐに取替え、臭いが残らないようにする
製成熟に伴うスプレーの場合、手術をするだけで治まる事もあります。また、不妊手術をする事でテリトリー意識が薄まる事から徐々にスプレーの必要性を猫が感じなくなるとも言われています。
多頭飼いが原因の場合、スプレーする猫を完全に隔離し、他の猫が一切入り込まない専用スペースを作る事で解決する事があります。
普段から猫がひとりで落ち着けるスペースを多く作り、猫同士の過干渉が起こらない環境を整える事が大切です。
また引越しなどで環境が大きく変わる場合、できる限り猫の周りにはそれまで使っていた物を多く置き、猫が出来る限り早く馴染めるようにしてあげましょう。
毎日猫の行動を見ていると、スプレーしそうな時というのが段々に分かってきます。スプレーをしそうな素振りを見せたら大きな声で優しく名前を呼んで撫でてやったりすると、猫はスプレーするのをやめて飼い主に意識が集中します。行動を起こす前に気を散らさせるのはとても効果があります。
前述のフェイシャル・フェロモンを配合した薬剤(スプレータイプやリキッドタイプ)や向精神薬の投与など、薬物を使用してスプレーを軽減させる方法もあります。フェロモン剤は市販されているものもありますが、薬物を使用する性質上、獣医師に相談した上での使用が望ましいと思います。
それまでスプレーをしていなかった子が突然スプレーを始めてしまった場合、何かしら日常に不満がある為と考えられます。猫のストレスのバロメーターと考え、猫が安心して暮らせる環境を整えてあげられるよう努力しましょう。
スプレーとは異なり、トイレ以外の場所で排泄行為をしてしまう場合、根気よく対処する事でトイレのしつけをやり直す事は可能です。粗相の場合もスプレーと同様、猫を叱らず速やかに臭いが残らないよう掃除をします。
まず、なぜ猫がトイレ以外で排泄してしまうのかを考えます。下部尿路疾患に伴う膀胱炎など、病気が引き金になっている場合もありますので、まずそういった問題が無いかチェックし、獣医師の診察を受けるようにします。
老化による失禁など、しつけで改善できない問題を抱えている場合、オムツを利用するなどの措置が必要になってきます。
猫がトイレを嫌がる要素が無いか考えます。全く異なるタイプのトイレをもう一つ設置する事も視野に入れ、トイレの環境改善をします。
猫がトイレを嫌がる理由として、主なものは以下の通りです。
毎日の掃除以外にも、砂の種類によっては砂に残った臭いを嫌がるようになります。
人通りの激しい場所にある。猫は排泄しているのを見られるのを嫌います。
寒暖の差が激しい場所も猫が嫌がる要素のひとつになります。
排泄中に何か驚くような音がした。膀胱炎や便秘などで排泄時に痛い思いをした場合、トイレ自体に恐怖心を持つ事があります。
幼い頃にタオルで排泄していた経験のある子は、タオルや布団などの柔らかい布の上で排泄する事を好むようになる事があります。
トイレ自体が気に入らず、他の場所で排泄してしまっている場合、トイレの場所や砂の素材をまるきり変えてしまう事で完全に解決する事もありますが、どんな場合でも、一度他で粗相をしてしまっている以上トイレ以外での排泄がインプットされていますので、もう一度トイレのしつけをやり直す必要が出てきます。
子猫のようにまっさらな状態にトイレを学習させるのと異なり、大人になってからのトイレのしつけはかなりの根気を要します。トイレを覚えるまでのしばらくの間は家の中でも行動範囲を制限し、頃合を見て猫をトイレに連れて行くようにするのが確実な方法です。
大人になると、食事の時間や排泄のタイミングは大体毎日同じリズムで分かりやすくなります。トイレ以外で排泄する事を完全に防げるようなら行動を制限する必要も無いかもしれません。ただし、この間には極力トイレを失敗しないように注意します。留守にする時にはケージに入れるなどの配慮も必要になります。
トイレを覚えるまでの期間は個体差があります。なかなか覚えてくれなくても根気よくあきらめずに続けましょう。もし失敗しても叱りつけるような事はしないようにしましょう。