猫のお手入れ
猫は飼い主が手入れをしなくても、基本的に自分で体を舐めたり爪を研いだりして体の手入れをします。これをセルフグルーミングと言い、猫が単独生活をする肉食獣である為に本能的に備わった行動と言えます。
猫は体中をくまなく舐める事によって、体に付いた獲物や排泄物などの臭いを消し去り、自分の存在を周囲から隠していると考えられます。それと同時に被毛を清潔に保ち、精神状態を落ち着かせる効果もセルフグルーミングは持っています。
それでは猫のグルーミングを人間が手助けする必要は無いのではないか?という疑問が沸いてきます。グルーミングという言葉を辞書で引くと、次のような意味が記載されています。
グルーミング:髪やひげ、または全身を手入れし、清潔に保つ事。毛繕い。
確かにグルーミングの目的は、体をキレイにする事です。しかし、人間が猫に対して行うグルーミングは、それ以上の意味合いを含んできます。では、人間が行うグルーミングの利点とは何でしょう?
コミュニケーション
人間が猫の体を優しく撫でたり、ブラッシングしてあげる事は、最高のコミュニケーション手段になります。全身をくまなく触られる事が大好きな猫はそれだけ人間を信頼しているというバロメーターになります。母猫が子猫を舐めてあげるように、仲の良い猫同士で舐めあうように、うちの子をたくさん撫でてあげましょう。
中には撫でてくれた人間の手を舐め返してくれる子もいますね。これは人間に対して最大の愛情表現と受け取って良いでしょう。また、人間にとっても、猫の体を撫でる事で精神状態の安定や血圧の安定など、嬉しい効果があるようです。アニマルセラピーはこういった効果を利用した療法のひとつですね。
健康チェック
定期的に全身を撫でる事で、猫の体の異常を早期に発見する事ができます。被毛の艶が違う、皮膚の弾力が違う、傷が出来ている、体温が高い…など。いつもは触られても平気なところを嫌がるという反応も異常のひとつです。例えば重篤な病気の兆候だったとしても、早期に発見できる事で治療の幅も広がり、軽度で済む事が多々あります。
清潔度アップ
もちろんグルーミングの元々の目的である、被毛や全身を清潔に保つ効果があります。セルフグルーミングで飲み込んでしまう被毛の量を減らし、爪切りをする事で家具を傷めるのを防ぐ事もできます。毎日のブラッシングやコーミングは、皮膚を適度に刺激し、血行を促し、代謝を助けます。
長毛、短毛に限らず、グルーミングは猫と仲良くなるひとつの手段でもあります。毎日少しずつ、猫がグルーミングを嫌いにならないように、慣らしていきましょう。
グルーミング用品
ブラッシング
スリッカーブラシ
金属製ブラシのひとつです。土台にクッションが入っている、針金の細いタイプをソフトスリッカー、クッションが無く、やや太い針金のものをハードスリッカーと言います。猫にはソフトスリッカーの小さめのタイプが使いやすいでしょう。
短毛種の通常ブラッシングや、長毛種の毛玉取りに使用します。使用の際は皮膚を傷つけないように気をつけます。
ピンブラシ
金属製ブラシのひとつです。ピンの一本一本が太く、間隔が開いているので、長毛種のブラッシングに適しています。毛の間に空気を含ませ、ふわっとした仕上がりになります。
獣毛ブラシ
主に豚毛を使用したブラシです。短毛種の仕上げに艶出しの目的で使用されます。
ラバーブラシ
ゴム製のブラシです。短毛種の抜け毛取りに使用します。また、絨毯に付いた猫の毛を集めるのにも使用できます。力を入れすぎると抜けていない毛まで抜きとってしまう事もあるので注意します。長毛種には適しません。
コーミング
コーム
短毛、長毛問わず、毛の流れを整えたり、ブラシに付いた毛を取る事もできます。ステンレス製のものを選ぶと消毒もできるので衛生的です。目の細かいものと荒いものが一本になった両目櫛が便利です。
のみとりコーム
とても目の細かい、のみ取り用として作られたコームです。
のみ取り以外にも、顔などの毛が柔らかく、短いところを梳かすのに便利です。
爪切り
ギロチン型のもの、はさみ型のものがあります。どちらを選ぶかは飼い主さんの使い勝手の良い方で良いでしょう。人間用のものは、爪が割れてしまう事があるのでおすすめできません。猫用に一本準備するようにしましょう。
耳掃除
綿棒
耳掃除はかならず綿棒にローションを沁み込ませて行います。乾いたままの綿棒で拭くのは耳の粘膜を傷める事になりますのでやめましょう。猫にはベビー綿棒が手に入りやすく便利です。
イヤーローション
綿棒に沁み込ませて使用する、ローションです。耳垢を柔らかくし、取りやすくします。また、綿棒の繊維で粘膜を傷めるのを防ぎます。薬局にある皮膚消毒に使う消毒用エタノールを使用する事もできます。
歯みがき
キャットフードが主食になっている現代の猫には、歯磨きが必要になっています。指にガーゼを巻いて拭いてあげるなどの日常的なケアで虫歯や歯石、歯周病を防ぐ事ができます。最初は嫌がる子が多いので、無理をせず徐々に慣らしていくようにしましょう。
シャンプー・リンス
猫のケアの中で、日常的に適切なブラッシングが行われていれば、シャンプーはほとんど必要ありません。ただし、長毛種やブラッシングだけではケアしきれない汚れがある場合はシャンプーが必要になります。どうしてもシャンプーをしなければならない時に備え、猫用のシャンプーを準備しておきましょう。
その他
シャンプーする程ではない、日常のちょっとした汚れ、トイレの後のお尻拭きなどに、ウエットティッシュを準備しておくと便利です。赤ちゃん用のお尻拭きなどが代用できます。目や口の周りを拭くものは、アルコール未使用の製品を選ぶようにしましょう。