与えてはいけないもの
人間の食べる物は与えない
猫は人間とは基本的な食性が全く異なる事は前述の項でも書いています。基本的に人間は雑食性で、日本人は特に植物性の食物を多く摂取する人種です。この事からも、猫に人間の食べる物を与えても、猫はそれらの栄養素を上手に利用する事ができず、結果として栄養失調のような状態に陥ってしまいます。
また、人間の食べる物には塩分や香辛料が多く含まれており、体の小さな猫には少量でも内臓に大きな負担をかけてしまいます。時には命に関わる事になりますので、人間の食べる物は決して与えないようにしましょう。
また、一切味付けをしていなくても、猫にとって有害な食べ物は色々あります。以下に特に猫に与えてはいけないとされるものを上げていきます。
ネギ類
「タマネギ中毒」という言葉を聞いた事がある方も多いと思いますが、この疾患はタマネギだけでなく、他のネギ類・ユリ科の植物を摂取する事でも起こります。これらの植物には体内で赤血球を破壊する成分を作り出してしまう化学物質が含まれており、摂取する事によって溶血性貧血を引き起こします。この現象は人間でも起きているらしいという説もありますが、猫は体が小さい為、特に重篤な症状になり、命を落とす事にもなります。
この化学物質は、加熱でも壊れる事なく、調理し煮汁などにも溶け出す為、煮汁からネギ類を取り除いて与えたとしても意味がありません。
チョコレート
原料であるカカオの成分、デオブロミンが中枢神経を刺激し、痙攣発作や不整脈を引き起こします。
特にカカオ含有量の多いビターチョコレートは危険です。50~60グラムで致死量に至ると言われています。
人間用の医薬品、サプリメント
特に鎮痛剤や風邪薬は危険です。獣医師の指示が無い物は決して与えないようにしましょう。
医薬部外品のサプリメントなども、猫にとって有害な物質が含まれる事があります。ビタミン、ミネラル類など、過剰摂取が重篤な障害を生む事がありますので、誤食などにも充分注意しましょう。
アワビ、トコブシ、サザエ、トリガイ
昔から「猫にアワビを食べさせると耳が落ちる」という言葉があるように、貝類を食べさせると光線過敏症になり、特に皮膚の薄い耳に炎症を起こす事が知られています。ひどくなると耳の組織が壊死し、まさしく「耳が落ちる」状態になってしまいます。
アボカド
アボガドに含まれるペルジンという物質が猫にとって有害になります。胃腸の炎症による嘔吐や下痢を起こし、ひどい場合には死亡する事もあります。この物質は果実、皮、種子などアボガド全体に含まれています。
アルコール
嘔吐や下痢、中枢神経の麻痺など、いわゆる酒酔いの状態ですが、猫は体が小さい為、少量で急性アルコール中毒の症状を発し、死亡する事もあります。
カフェイン
心臓や神経系に異常をきたします。
生の貝類、甲殻類、イカ、タコ
これらに含まれるチアミナーゼという酵素がチアミン(ビタミンB1)を破壊する為、チアミン欠乏症を起こします。これにより、食欲の低下や嘔吐、ひどくなると痙攣やふらつきなどの神経症状が出る事があります。チアミナーゼはコイやニジマスなどの淡水魚にも含まれます。
加熱する事でチアミナーゼは破壊されますので、これらの食材を与える時には必ず加熱するようにします。ただしイカやタコは消化が悪い為、あまりおすすめできる食材ではありません。
硬い骨(鯛の骨、鶏の骨など)
硬い骨類は、あまり咀嚼を行わない猫にとって、とても危険な食材です。成分による中毒などではなく、物理的に鋭利な断面が消化管を傷つけます。また、うまく飲み込めたとしても、消化があまり良くない為、与えない方が良いでしょう。
生の豚肉
人間でも生食は良くないと言われていますが、生の豚肉にはトキソプラズマが潜んでいる事があります。特に猫はトキソプラズマが体内で完全に成長するため、人畜共通感染症の観点からも危険度は高くなります。
生の卵白
生の卵白中に含まれるアビジンという成分が、ビタミンB群のなかのひとつビオチンを分解し、欠乏症になります。ビオチンは粘膜を保護する働きを持つ栄養素の為、下痢、皮膚炎、結膜炎など、体の各粘膜部分に異常をきたします。アビジンは加熱する事で破壊される為、卵の白身を与える時は必ず加熱するようにします。
青魚(アジ・サバ・イワシなど)
青魚に含まれる不飽和脂肪酸が体内の脂肪を酸化させ、「黄色脂肪症(イエローファット)」という病気を引き起こす事があります。皮下脂肪が炎症を起こし、しこりのようになってしまったり、抱かれるのを極端に嫌がるようになります。
この病気は長年にわたり、偏った食生活をしてきた結果発症します。時々少量の青魚を食べさせたからといってかかる病気ではありません。
通常バランスの良い食生活をしている子に、時折変化をもたせる為に食べさせる程度であれば全く問題無いといえます。
煮干・海苔・鰹節
これらをとても好む子も多い3つの食材ですが、マグネシウムを多く含む為、あまり頻繁に与える事は好ましくありません。与えてはいけないものではありませんが、量や頻度を加減するようにしましょう。また、人間用として販売されているものには調味料が多く含まれている場合がありますので注意するようにしましょう。
レバー
これも過食が原因で、ビタミンA過剰症を引き起こす事があります。主な症状は骨疾患(足の痛み、脊髄の変形など)、歯肉炎、歯の異常などです。ビタミンAのような脂溶性ビタミンは取りすぎると危険です。
消化のしにくい食材
イカ、タコ、トウモロコシ、ナッツ類、野菜など
猫は現在でも完全肉食動物な為、野菜類などの植物性栄養素を消化吸収する事が苦手です。特に植物の細胞を構成するセルロースを分解する事ができない為、野菜などを大量に摂取すると消化不良を起こします。
牛乳
牛乳は優れた栄養素を含んだ食品であるにも関わらず、猫は牛乳に含まれるラクトース(乳糖)を分解する酵素をほとんど持たない為、牛乳を飲んでも消化不良を起こしてしまいます。これは体質により、中にはどんなに牛乳をたくさん飲んでも全く消化不良を起こさない子もいます。小さい頃から習慣的に牛乳を飲ませると乳糖分解酵素(ラクターゼ)が継続して作られるようになるとも言われています。
どうしても猫に牛乳を飲ませたい場合自分の猫がラクターゼを持つかどうかというのは実際に飲ませてみないと判断がつきません。この場合消化不良を起こすリスクが必ず付いて回ります。現在は猫用に加工された牛乳も市販されていますので、こういったものや猫用ミルクを飲ませるようにしましょう。
ミネラルウォーター
硬水と言われる水にはマグネシウムなどのミネラル分が多く含まれています。これらは猫に飲ませ続けるとFUS(下部尿路疾患)の原因になる可能性があります。どうしてもミネラルウォーターを使用したい場合は軟水を選びましょう。
有害な植物群
猫が暮らす環境の中に存在する様々な危険の中で、日常何の気なしに置いてしまっている観葉植物などに含まれる成分が思わぬ毒性を持つ事が多々あります。
一例としていくつかの植物群をリストアップします。ただし、ここに記載した植物群だけが有害な訳ではありません。
観葉植物を家に置く時は、必ず個別に有害ではないか調べる習慣を付けるようにするのも飼い主の務めです。
- アイビー
- アイリス
- アグラオネマ
- 麻
- アサガオ
- アザレア
- アジサイ
- アスパラガス類
- アセビ
- アボカド
- アマリリス
- アロエ類
- アンスリウム
- イチイ
- イヌサフラン
- イヌホオズキ
- インドゴムノキ
- ウルシ
- カラー
- カラジウム
- グラジオラス
- クリスマスローズ
- クレマチス
- グロリオサ
- コルディリネ類
- サイネリア
- ジギタリス
- シクラメン
- ジャケツイバラ
- シンゴニウム類
- スイートピー
- スイセン
- スズラン
- スパティフィラム類
- セイヨウキョウチクトウ
- セイヨウヒイラギ
- セネキオ
- センダン
- ソテツ類
- ダチュラ
- タマサンゴ
- チューリップ
- ツツジ
- ツルウメモドキ
- ディフェンバキア類
- トチノキ
- ドラセナ類(リュウゼツルラン)
- ナス科植物類
- ナンテン
- バラ科植物類
- ヒヤシンス
- フィロデンドロン類
- ブラッシア
- プリムラ
- プレカトリービーン
- ヘメロカリス
- ペンシルカクタス
- ポトス類
- ポインセチア
- マカダミアナッツ
- モンステラ類
- ヤドリギ
- ユッカ類
- ユリ科植物類