そもそも療法食が何なのかご存知ですか?
フードそのものにも種類があるのをご存知でしょうか。猫のフードには、健康を維持するために必要な適量のフードと水を提供する「総合栄養食」、補足的な栄養を提供し過剰摂取を避けるために制限が必要な「一般食」、そして特定の疾患の管理を目的とした「療法食」の3種類が存在します。
療法食は特定の疾患に対応するよう栄養バランスが調整されたフードで、一般のフードとは異なり病気の管理に特化した専門知識が必要となります。療法食を猫に提供する必要が生じた場合は、常に獣医師と相談しながら適切な選択を行うことが求められます。
療法食を選ぶ際には、個人的な判断よりも専門的な意見を重視しましょう。
例えば、尿路結石治療のフードで考えたとき、治療中のみ与えるべきものや完治後に適切なもの、さらに肥満が問題となる場合のものといったように、各ブランドごとにさまざまな選択肢が存在します。特に療法食は「前の猫がこれを食べていたから」といった理由で選択すると、意図しない健康上の問題を引き起こす可能性があります。
療法食の導入や中止、続行は、専門的な知識がない場合は疾患の悪化や再発につながる可能性があります。そのため、どのような状況でも獣医師との相談を忘れないようにしましょう。
多くのブランドが療法食を提供しており、それぞれでフードの配合や種類が異なります。栄養表示を確認したり、ドライフードやウェットフードなど、提供される形状の違いにも目を通しておきましょう。
フランスに本社を置き、世界的に人気のあるブランドがロイヤルカナンです。価格が比較的手頃で、安全性を重視しているだけでなく、フードの魅力も高いため日本でも愛されています。
特に、下部尿路疾患用のフードには多種多様な選択肢があり、猫の病状に合わせてフードを選択できます。ただし、塩分が多いとも言われています。心臓病や腎臓病の進行状況によっては塩分制限が必要となることもあるので、懸念がある場合は獣医師と相談することをお勧めします。
アメリカのブランドで、ロイヤルカナンと同様に世界中で愛されているのがヒルズです。フードの切り替えがスムーズに行えるとの声もあり、有害な添加物が含まれていないため安心して与えることができます。
ただし、ヒルズも他のフード同様、グルテンフリーではなく穀物も含まれています。アレルギーを持つ猫の場合は、獣医師と相談することが重要です。
国内生産のブランドであるドクターズケアは、合成酸化防止剤や人工添加物を使用せず、小粒で食べやすいと好評です。
一定の安全性が確保されていますが、こちらも穀物を含むため、アレルギーを持つ猫には注意が必要です。
特定の疾患、特に下部尿路疾患のような罹患しやすい疾患に対しては、多くのブランドから療法食が提供されています。また、甲状腺疾患に特化した療法食も存在しますが、制約がある場合があります。
この記事では、猫が特に罹患しやすい疾患と、それに対応する療法食を紹介します。ただし、最終的には愛猫の具体的な症状や体調に応じて、獣医師の意見を参考に選択してください。
フードに含まれるマグネシウム過多、水分をほぼ摂取しない、肥満等の理由から結石ができてしまい、結果的に尿路結石になってしまうケースがしばしば見られます。
市販されているフードには、水分摂取を促すために塩分を多めに含んだものや、尿のpHバランスを正常化するものなどがあります。ただし、塩分が多いフードは心臓病や腎臓病の進行度によっては他の疾患を再発または悪化させるリスクがあるため、懸念がある場合は必ず獣医師に相談してください。
何らかの理由で腎臓に障害が起こってしまう腎臓病ですが、症状が出にくい上に傷ついてしまった部分の機能は回復しません。疾患の進行を遅らせ、症状を軽減するためには、食事療法が極めて重要となります。
病気が進行すると食欲が低下する傾向にあり、消化率の高い食事や、問題となるナトリウムやリンを制限した食事が推奨されます。また、固形フードが食べにくい場合は、ウェットタイプに切り替えるといった対応も考慮に入れてください。
去勢済みのオスや肥満の猫は糖尿病に罹患しやすいとされています。血糖値を適切に管理し、急な変動を防ぐことが必要となってきます。
食物繊維を含んだフードは食後の血糖値上昇を抑制し、糖尿病の管理に役立ちます。しかしながら、フードだけでなく、適度な運動を通じて体重をコントロールすることも重要です。
ストレスや高齢、細菌感染などから栄養素の吸収がうまくいかない状態を消化器病と呼びます。
これらは下痢や便秘、重症化すると大腸炎などの疾患に繋がることがあります。特に下痢が続くと脱水症状を引き起こすこともあります。猫の様子が普段と異なる場合は、速やかに獣医師の診察を受けてください。
アトピー、寄生虫、アレルギーなどが原因でかゆみを伴う皮膚疾患があります。これらの疾患は、食事だけでなく、獣医師との相談を通じて適度にシャンプーを行ったり、環境温度の管理等により、ある程度コントロールすることが可能です。
掻きむしってしまう原因がフードアレルギーである場合は、食事内容に特に注意が必要です。バランスの良い食事を通じて健康な皮膚を維持することも大切です。皮膚病への対応は早期が肝心なので、適切なケアを心掛けてください。
療法食が美味しくないという固定観念があるかもしれませんが、現在では各メーカーが猫の健康を守るために日々研究を重ね、フードの質を高めています。療法食への切り替えは慎重に行いながら、継続的に食べてもらえるように下記の留意点を抑えましょう。
猫が療法食に興味を示したら、一気にフードを切り替えることも選択肢の一つです。しかし、すぐに飽きてしまう可能性もあるため、続けられるか注意深く見守りましょう。また、猫が療法食に興味を示さない場合は、徐々にフードを切り替えるのも一つの手段です。
初めに、既存のフードと新しいフードを9:1の割合で混ぜ、猫が問題なく食べられるようであれば次第に割合を6:4、3:7へと変更する方法があります。または、新旧のフードを両方用意し、新しいフードを好んで食べるようになったら徐々に既存のフードを減らしていくという手法もあります。猫の反応に合わせて最適な切り替え方を探しましょう。
療法食への興味を引き出すために、最初はおやつのような感覚で手から食べさせてみるのはどうでしょうか。ただし、無理強いは禁物です。飼い主から手渡されることにより、猫が新しいフードに興味を持つきっかけになるかもしれません。
さらに、新しいフードを猫が元々食べていたフードの容器に入れたり、パックなどに鰹節などを入れて匂いだけを移すという方法も効果的です。この際、あくまでも「匂いをつける」事が目的のため、新旧のフードが混ざったり、パックが開いて中身が出ないように注意しましょう。
ウェットフードは、レンジで人肌程度の35~40度に温めると匂いが強くなりフードをより魅力的にする効果があります。
この時、外は人肌でもこの時、外は人肌でも中は熱くなっている可能性もあるので、表面温度だけではなく、中まで適切に温まっているか確認しましょう。中は熱くなっている可能性もあるので、外側の温度だけで判断しないように気をつけてください。
病気によってはドライフードを好む猫がウェットフードを好むようになることもあります。そのような場合は、フードをふやかしたりウェットと混ぜたりして、味覚の変化を促すことでフードへの興味を引き出せます。
加えて、スープを加えたり、お気に入りの食べ物を少し混ぜたりする方法も有効です。ただし、何かを混ぜる場合には、療法食の目的を損なわないか、どの程度の量であれば適切なのか等、必ず獣医と相談した上で行ってください。
ケージが病院への移動手段と連想されると、猫はケージを避けるようになることがあります。同様に、病院から戻った直後に療法食を与えると、食事に対するネガティブな印象を持つ可能性があります。
可能であれば、その日だけは今まで通りのフードにして、療法食への切り替えは翌日から始めるという方法も考えられます。
猫が新しい食事に対して消極的であったり、食べてくれなかったとしても、罵ったり無理に食べさせようとしないでください。食事時間と嫌な経験が結びついてしまうと、その後の食事にも影響が出ることがあります。食べてくれない場合は、獣医と相談しながらブランドを変えてみるなど、必要な対応を行いましょう。何よりも大切なのは、猫にとって食事がストレスにならないような環境を作ることです。これが猫が療法食を食べ続けるための最良の方法となります。