ヨーロッパでは、“開発途上国”と言われる国に、長年住んでいます。
「イタリアはもはやセリエBではない」と、喜ぶべきか恥ずべきかの微妙なセリフを
名物元首相が声を大にしたほどの“お荷物”的存在
…セリエBとは、サッカー王国イタリアの、数多くあるプロリーグのトップに位置するセリエAに続く
1ランク下のもの、英仏独より格下、といった意味です。
しかし、基本、ペットの殺処分はゼロ、意外なことに愛護大国イギリスでは10%ほどあるとのこと。
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8748098_po_0830.pdf?contentNo=1
国立国会図書館 諸外国における犬猫殺処分をめぐる状況―イギリス、ドイツ、アメリカ―
昔々、日本にエイズ(人間)が到着した後、ネコエイズ(FIV)の存在も明らかになりました。
現在ほど人間についてもネコについても、情報がない時代のことです。
偶然見かけた記事によれば、日本とイタリアではネコエイズが多いとのこと
…人口密度ならぬ、“ネコ密度”が高いからだという説明を記憶しています。
確かに各都市の旧市街を歩いてみると、徘徊するネコに出会う機会は多いです。
車の入れないヴェネツィアはともかく、交通量の殺人的に多いローマですが、
一歩路地に入ると至る所を歩いています。
TNR、地域ネコという言葉をつい最近まで知らなかった私、
しかしローマの中心部に居住する「ローマのネコ」については実際目にしたこともあり、
紹介しようと少々調べてみると、“TNR無意味論”にもたどり着きました。
「欧米では…(否定的に見られている)」とくくられ、TNRを批判するものです。
まずはTNRの概要から
https://en.wikipedia.org/wiki/Trap-neuter-return
残念ながら日本語版はありませんが、TNRについての英語版、代表的各国の紹介です。
横浜市磯子区で1997年に始められた日本のTNR、始めの一歩はやはりイギリス、
50年代にすでに似たものが行われています。
イタリアは1965年にイギリス人がヴェネツィアで導入、その後ローマを含む各地で広がり、
国全体の保護活動のアウトラインである、と紹介されています。
一応成功国となるようで、これについては初めて知りました。
trap-neuter-returnで検索すると、推進派と共に反対派の意見も並びます。
アメリカではエサやりを違法とする判例があり、調査によればTNRの効果は少ないとのこと
他の生物との共存の問題もあり、否定論も少なくありません。
ローマの100のコロニー(グループ)例を上げ、10年間に総数は減少したものの、
数の減ったコロニーもあれば現状維持もしくは増加のものもある
…理由はペットの遺棄が後を絶たないから
住民の教育無しにはTNRは無駄に終わる、とある英語レポートは結んでいます。
増え続ける遺棄については日本にもしっかり当てはまること、洋ネコ混じり、
時には純血とさえ見える保護猫の増加には、目を見張ります。
動物愛護といえば、上の国立国会図書館の資料のように英米独が挙がり、地味めなイタリアです。
Wikipediaに興味深い記述…NO KILLING LAW殺処分禁止の法律導入というものがあり、
少々調べてみました。
【LEGGE 14 agosto 1991, n. 281】
Legge quadro in materia di animali di affezione e prevenzione del randagismo
Pubblicata nella Gazzetta Ufficiale n. 203 del 30 agosto 1991
1991年8月30日公布の、愛護と野良化を防止する骨子の法律で、
人間と愛玩動物の共生を目的としています。
日本の「動物愛護法」にあたるものです。
http://www.salute.gov.it/imgs/C_17_normativa_911_allegato.pdf
↑は条文、イタリア語ですが「EU内に、飼い主の居ないネコにエサやりを許す国はない」と
断言する日本語記事も目にしたので、根拠が無いものではないという意味で、貼り付けました。
内容は大雑把にいうと…
○愛玩動物の、殺傷、遺棄、虐待、動物実験利用を禁じる
○捕獲された犬の殺処分を禁じる…重病等、必要な場合は獣医の処置(麻酔を使った)によるもの
○i gatti che vivono in libertà自由に生きているネコの虐待、殺傷を禁じる
○自由に生きているネコは、避妊処置の後、元の居住地に戻す
○自由に行きているネコは、不治の病の場合のみ殺処分をする
○保護活動をするものは、現地の保健機関等との共同作業で、ネコの健康管理をしコロニー(居住地)を運営することができる
施行年の1991年には1.000.000.000リラ≒500,000ユーロ、1992年1993年には2.000.000.000の予算が組まれる
若干情けない訳ですが、殺処分を禁じ、TNRを法律で推進しています。
イタリア語には、randaggio野良という言葉も存在するので、
この法律制定時、すでに「地域猫」の存在があったことが想像出来ます。
公務員の手取りが、1.000.000リラの時代のことであり、予算はあまり大きなものではありませんが
無いよりはマシ…
私が住むのは田舎町、ネコは外飼いばかりで避妊への関心はまだまだ薄いです。
生まれたならば、誰かにもらってもらう…つい最近、私にもお声がかかりました。
私の家のあるのは田舎町の田舎部分、面する道路は通り抜けが出来ないので交通量は少なく、
空き地もあるので、道路中央部に寝転がっている外飼いや野良のネコをよく見かけます。
近所の無責任な飼い方やエサやりで、我家の庭には一時期10匹を超えるお外にゃんず
…ご飯付きです。
自腹を切って処置をし、またご近所も野良猫に混ぜて避妊という手段を見つけ出し、
年月と共に櫛の歯が欠けるように少なくなり、現在3匹です。
獣医に出向けば大半はイヌであった20年前、最近ではネコも増えています。
公費を私物化するケースの多いイタリア、しかし上記のように多少は有意義に使われたようです。
上の法律では、指定施設でペットも無料で避妊手術をするように、とあります。
…が、イタリアらしく、理想と現実のギャップは大きく実現されていません。
TNRという言葉は浸透していないものの、sterilizzazione避妊手術で検索すると
3匹以上のコロニーでは、無料で処置するという地方自治体(AREZZO)の告知も出てきました。
これは、4年前のヴェネツィア訪問時、ある島で撮影した猫小屋です。
一瞬保育園ではないかと思ったほど可愛らしい物、小さな島ですが、散策中僅かな距離で
2箇所で見ています。
20年以上前にヴェネチィア本土を訪問した際、ネコの数の多さと体格の良さが印象的でした。
海に面しており魚が豊富、車両通行がなく当然であると思った私ですが、
TNRの成果によるものであること、今回気付きました。
ネコの繁殖力は非常に高いもの、 仔猫の生存率は2.8%と計算しても、
1匹の雌猫が9年後には11,606,077匹になるというアメリカの研究もあるそうです。
劇的な減少は無理、しかし今ある生命を大切に、生まれ来る不幸な命を極力少なくするために、
そして住民とネコの共存のため、イタリアは尽力しています。
経済は常にアップアップで問題山積みのイタリア、しかしローマ法王を抱えるカトリック大国であり
人道的立場や命を守るという点においては、世界のトップに踊り出します。
法律により守られているイタリアの“自由に生きるネコ”の代表選手、ローマの地域ネコの現状を、
次回紹介です。
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