あたし、ノラっていいます。ずっと、野良猫として生きてきたの。
一か月くらい前かな、長い間、食べ物にありつけなくて、寒さで風邪もこじらせて、鼻水はポタポタ垂れるし、目はショボショボして見えづらいし、疲れ果てて、ある家のお庭にたどりついたの。
車の下に隠れて、ただ、じっとしてたわ。
そしたらね、その家のニンゲンがおいでって手招きして、ゴハンをくれたの。
お腹いっぱい食べたのなんて、生まれて初めて。
その日以来、そのお庭に行って鳴いたら、いつもゴハンをもらえるようになったの。
それに、そのヒトは自分のこと、あたしのパパだよって言ってくれたんだ。

ゴハンをもらうようになって、風邪もマシになってきた頃。

こういう風にデッキでくつろいでも怒られない。あたしに安心できる場所ができたの。
でも、そんな幸せな日々も長くは続かなかったわ。
立派な体格の鈴付きの首輪をした猫♂がやってきて、あたしにケンカをしかけてくるようになったの。
自分はどこぞのおぼっちゃまなんだから、おうちの中でヌクヌクしてたらいいのに。
だけど、あたしは平和主義だし、ケンカして大怪我したら命取りだってこともわかってたから、残念だけど、パパのところへ行くのを控えるようにしたの。
時々、パパがあたしを呼ぶ声が聞こえて、あたしも走って行きたかったけど、ぐっと我慢してた。
そんなある日、パパと他のヒトたちが何か話し合いをしてるのが見えたの。
そして、どうしてもお腹がすいて耐えられなくなって、またパパのところへ行ってみたの。
そしたら...

なぜか、こんなことになっちゃった。
そばにいるのは、パパじゃない、見知らぬヒト。おにいさんを自称するアヤシイ奴。
こんなところにあたしを閉じ込めて、どうしようっていうのかしら?
お外と違って、いつも暖かいし、美味しいゴハンはもらえるけど...。
おにいさんは、ゴハンをくれるとき、いつも話しかけてきて、あたしと仲良くなりたいみたい。
だけど、こっちは、ながーい野良生活で、ニンゲンの恐ろしさが身にしみてる。
パパにだって、一定の距離を保って接触してたあたしよ。
見知らぬヒトに簡単に心を許したりしないわ。
だから、ゴハンも、彼がいなくなったのを確認してから、完食してるの。
ちょっと前には、ハウスが設置されて、あたしはいつもその奥深くに鎮座してる。
最近、おにいさんは、ハウスの入り口に鰹節を捧げ持ってきて、あたしのご機嫌伺いするようになったのよ。
もちろん、知らんぷりしてるけどね。
昨日は、鰹節を捧げ持ってきたとき、また無視してたら、なんと、なれなれしくあたしを撫でてきたの。
数分くらいだったから、まあ我慢してあげてたけど...。

こんな風ににらみをきかせてやったわ。イヒヒ。
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