🚨昔話② 見てはいけないもの…

2017年8月10日(木) 706 / 18

※1989年の夏に体験した何とも説明のつかない出来事をお話しします。
一応、怪談の部類に入るかと思います。
知りたくない方は戻るをクリック…

1989年、確か消費税がはじめて導入された年。
私も独り暮らしに馴れ、この年の春休みに消費税関係のアルバイトをしていました。
大学の同級生数人とやってたのですが、そのうちの一人にFがいました。
Fは私のアパートの目と鼻の先に同じようなアパートに住んでました。
彼のほうが入学した年から住んでたので私が目と鼻の先に越して来たことになります。

大学三年で所属する研究室が決まるまでは、たいてい毎日一緒につるんでました。

彼の他にも同じような友人が4～5人いました。
あまり賢くはなかった記憶があり、英語の授業で same を思いっきりサムと読んだときは、入った大学間違ったかな？とまで思わせてくれたやつでした。
仲間内で一番落ち着きがないやつでしたが、どこか憎めない。

そんなある日、私があのハチワレの仔を看取った数日後の夕方、Fから電話があり彼のアパートで飲み会やるから来てよ、とのお誘い。

この頃、毎週末、朝早くに出掛け日曜遅くに帰宅するバイトをしてたので、久し振りに大学の仲間ともいいか？と思い、自前の缶ビールとツマミを買ってFのアパートに向かいました。

彼のアパートはいわゆる1K風呂なし。
二階建ての二階で三畳ほどの物置兼キッチンに六畳の和室、玄関は専用階段を登るつくり。
私のアパートも似たようなものでしたが、同じ二階に三部屋ありました。

もちろん、エアコンなどついておらず、夏場は短パン、Tシャツで首ふり扇風機の風に当たって暑さをしのいでました。

部屋にあがると、まだ誰も来てなかったので、他に誰が来るのか尋ねると、いや、金ちゃんだけだよ？という返事。
意表を付かれましたが、今で言う構ってちゃんな性格をしてたので、なんか話でもあんだろ的な気持ちでした。

なぜ二人だと落ち着かなかったのかと言うと、彼は酒に強いというか、ベロベロになるまで飲むタイプなのに対し、私はビールならコップ一杯で出来上がる下戸だからです。
また、Fとは数人で飲むことはあっても二人きりは、知りあってからの二年間で初めてでした。

そんなことだから、何か恋話か？金の無心か？はてまた就活のことか？など多少構えてましたが、結局小さなブラウン管のテレビ番組を見ながら、たわいない話をし、腹ごしらえにカップラーメンをすすっただけ。
Fも顔は赤くなってましたが、普段の10分の1くらいしか飲んでませんでした。

そんな感じでしたので、10時くらいに友人達を呼ぼうよ？と話したところ、返ってきた返事は今日は早く寝よう？でした。
二十歳過ぎの男同士で飲んで、22時に寝るのは早すぎね？と非常に違和感があったことを覚えています。

六畳の部屋にはビニールの衣装ケースやテレビ、シングルのパイプベッドがあり、ちゃぶ台をたたみ、そこに私が寝て隣りのベッドにFが寝ました。

恐らく2時頃だったでしょう。
私は夢を観てました。
私は揺すられて起こされる夢…たぶん夢だったはずなんです。
重い目蓋が少し空くと、天井の蛍光灯の豆電球が見えました。
なんとなく、まわりに人の気配を感じましたが、なかなか目が覚めない…
もう少し目が開きかけたとき、私をとりまく数人の気配がはっきりと感じられました。

私は…
あ～はめられた～
私が寝たところに友人達がやって来て、からかってやんの！とまず思いました。
身体がうまく動かないのも、そいつらが押さえたりしてるんだ！と、笑いさえ出そうになってました。

起き上がるのに、ほんの数秒だったのか、かなりかかったのかは曖昧ですが、起き上がり回りを見渡しましたが、そこには誰もいない…

隣りで寝ているFに、おい、F、おい！と声を掛けましたが死んだように眠ってました。
私はそんなことをしそうな友人の名を数名呼びましたが、チッチッ…と鳴る時計の秒針、台所の冷蔵庫のボワーっという音以外、耳には聞こえてこず、静まりかえってました。

それでもなお、立ち上がり台所、カーテンの裏、玄関の靴の数などを見回りました。

なんかおかしいなぁと思いましたが、Fも起きないし眠けもあったので再度布団に入ることに。

考えることもなく、睡魔に飲み込まれそうになった時…

私の頭の方に、かなり大きな男のような真っ黒な影が…
そして両手両腕を押さえる黒い煙のような人の影が。
なんだ！なんだ！と思い起き上がろうとしましたが、上半身が動きません。
すると、下半身の方から私に覆い被るように何かが顔に近づいて来ました…

濡れた長い癖毛の中から顔らしきものが私の顔の斜め下から覗きこみ、にやりと歯を見せて笑いました。

真上の巨人、私を見つめる濡れた髪に覆われた顔、周囲を走り回ったりしているモノ、四肢を押さえるモノ…

恐怖、やばい！逃げなきゃ！様々な感情がどっと沸きだし必死に抵抗しました。
それが何秒だったのか、何分だったのかはわかりません。

しばらくしてやっと起き上がることが出来ましたが、そこはさっきと同じ静寂だけでした…

私はすぐに何の番組もやってない、砂の嵐とよばれるテレビ画面をつけ、Fを起こそうとしましたが、彼は寝返りを打って背中をこちら向けるだけでした。
テレビ画面の光が部屋を照らし、私は冷蔵庫から飲み物をとり、一気に飲みました。
熱帯夜だったからかもしれませんが、顔面も汗が吹き出してました。

たぶん、それからは寝ずに朝まで起きていたと思います。
空が明るくなってはじめてトイレに駆け込み我慢していた用を足したのを覚えています。

6時頃にFが起きたので、二人で近くのデニーズに行きました。
そこではじめて彼に昨晩のことを話し出すと…

Fが私の話を遮り、

やっぱり見たよね？！いたよね？！金ちゃんも見たよね！！

頭の上にたつ、大きな黒い影、部屋中を走り回る何か、手足を押さえる煙のような人の影…
そして濡れた長い髪の男とも女ともわからない顔…

彼が見たものと私が見たものが一致したときに、はっ！としたと言うより、Fに対し怒りというか、呆れといいますか、私は彼を怒鳴ってました。

何日か続けて襲われたので怖かったこと、精神的な病気かもしれないと思い、私を呼んだと。

事前に話さなかったのは、馬鹿にされるか信用されない、逆に誰も来てくれなくなると思ったから…

から？と何か口ごもったFに強めの口調で尋ねました。

Fは渋々続きを話しだしました。
同級生の女の子で、いろんなものが見えるという子から、私の名前が出たと。

あぁ、彼女からそのモノが見える話を聞いたとき、実家が神主の話をしたことを思い出しました。

それでか…納得は出来なかったけど、Fにとっちゃ藁をも掴む思いだったのだろう。

彼には効くかどうかわからないけど、玄関やトイレ、窓辺に盛塩をしておくように言い、また見るようなことがあったら大家に話してお祓いしてもらうか、引っ越すしかないと話した後、帰宅しました。

そして二日目の夜を迎えることに…

今日はこれくらいで…