彼女には沢山の気づきと学び、それから転機を貰いました。
あの日ヒゲ子が黒鷹号に入っていなかったら、
町との協働も実現しなかったと思うから。

交通事故、横隔膜ヘルニア手術からの生還、トライアル出戻り、
ヒゲ子はたくさんの苦労をしてきたはずなのに、それでも挫けず歪まず、
まっすぐに人間を愛してくれる優しい猫です。
ヒゲ子は警戒心が強いです。でも無駄に恐れません。
だからといって平気なわけじゃない。
ひとつひとつ、逆境を乗り越えてきた努力家です。
私はそんなヒゲ子のがんばりに応えたかった。
幸福への片道切符を彼女に持たせてやりたかったんです。
二度目のトライアルは順調そうに見えました。
甘えんぼなヒゲ子が可愛い、すっかりウチの子です、と里親さん。
先住さんとの距離も縮まっているかのように見えました。
しかし、トライアル終了日に返ってきた答えは、トライアル延長の希望。
家族の愛を独り占めしたいヒゲ子と先住さんの諍いが絶えないというのです。
里親さんは落ち込んでいました。
今のままではどちらの子にも悪い気がする、と。
後頭部をハンマーで殴られたような衝撃を受けました。
そのあとはただひたすら祈ることしかできませんでした。
鹿島神宮で祈願しました。
白い馬に乗った神の使い(交通機動隊とも言う)にもお布施しました。
里親さんとヒゲ子を信じて…。
願いは叶いました。
先住との小競り合いがなくなったわけではないけれど、
のんびり家族になっていきます、と里親さん。
ラッキーガール・ヒゲ子の一番の幸運は里親さんご夫婦に出会えたことです。


困難だらけだったヒゲ子の猫生。
でもこれから先、彼女の瞳に映るのは、
やさしくて綺麗な世界だけなんだと思ったら、胸がいっぱいになりました。
幸せにするつもりが、幸せにしてもらうのはいつも私のほう。
ありがとう、ヒゲ子。
愛を乞う猫は愛される猫だったんだなあと改めて。

ヒゲ子に心を寄せてくださったみなさま、ありがとうございました。
ヒゲ子は「チョビ子」という名前で生まれ変わりました。
愛するために、愛されるために、
死の淵から舞い戻ってきました。

卒業おめでとう。
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