辺りがすっかり夕焼けに染まったころ、チップとチャーミーは母猫にピースを託し帰ることにした。
「おばさん、よろしく頼むね。明日も来るから」
チップが立ち上がり、挨拶をした。眠ったままのピースに近付き頭を擦り付けている。
「大丈夫ですよ。ちゃんとお乳を飲ませておきますから」
「じゃあ、またね。ピース」
チャーミーも同じように額を擦り付けていた。
ピースは母猫の懐に抱かれたままで心地よい寝息を立てている。
二匹は何度も振り返りながら、並んで丘陵を下り始めた。母猫は二匹が見えなくなるまで首をもたげて見送っていた。
「チップ、あしたは朝早くから行くからね」
チャーミーが横を歩くチップを見ている。
「大丈夫さ。いつもお寝坊さんは君の方じゃないか」
チップは真っ直ぐ前を見たまま走り出した。
「言ったわね」
チャーミーが遅れてチップを追いかけている。
「だって本当の事なんだもん」
チップはチャーミーから逃げるようにスピードをあげた。じゃれあいながら二匹は、咲き誇る花を掻き分けて、ジグザグに走り回り坂を下っていく。
赤く染まった夕陽で丘陵に描かれていた一本松の陰も、暗い闇の中に溶け始めていた。
転がるように橋のたもとまで降りてきた二匹は、すぐに長老に報告をした。
「ピースはおばさんがちゃんと見守ってくれているよ」
先に着いたチップが見上げている。
「ピース? それは仔猫のことか」
不思議そうな顔をして長老が見下ろしている。
「そうなの。おばさんが考えたの。皆と幸せに暮らせるようにって名前を付けてくれたの。素敵でしょう。もう、何も心配いらないわ」
遅れてきたチャーミーが口下手なチップをフォローしていた。
「そうか、それは良い名前じゃ。みんなを幸せにしてくれそうだ。二人ともご苦労じゃったな。明日も行くのか、ピースのところへ」
長老がにこやかに尋ねている。
「もちろん」
二匹の声が揃って答える。
「でもチャーミーは寝坊しそうだけど」
横にいるチャーミーに目を合わせることなくチップが言った。
「そんなことないよ。私だって早起きぐらいできます」
チャーミーが口を尖らせている。
「ごめん、ごめん。お年よりは早起きだったね」
チップがにやけた表情をしている。
「何さ。そりゃアンタよりは上ですけど、年寄り扱いして。許さないわよ」
チャーミーが歯を剥いて怒った。
「まあ、まあ。冗談じゃよ、チャーミー。仲良くせねば。ピースの様子を時々わしにも知らせておくれ。頼んだぞ」
困ったものだという表情をした長老が二匹を諭している。
「任せてよ」
二匹の元気な声に長老も安心するのであった。
しかし、この時すでに丘陵では異変が起こり始めていたのだ。
ピースの様子に安心した長老をはじめチップたちは、この異変に気付くはずもなかった。
つづく
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いかがでしたか、今回のお話。
今日で第二話は終了です。
次回からいよいよ物語が動き出しますよ。
平和だった世界にちょっとした事件が起きます。
さて、どんな事件と思いますか。
どうぞ自由に考えて下さい。
ちょっとしたヒントを差し上げましょう。
ここの世界では一番大切なものは〝水〟です。
そこに仔猫がからんできます。
さて、どのような展開になるのでしょうね。答えは次回と言うことで。
閲覧数四桁を目標に書き始めた物語ですが、とてもとても届きそうにありません。きっと訴えかけるものが欠けているのでしょう。
もう少し、アピールせねばならないでしょうかね。
いえいえ、内容で勝負です。
応援お願いしますね。
次回もお楽しみに。
先週に引き続き画像処理をしてみました。
面白いです。病み付きになりそうです。
いかがでしょう。
僕がポスターになりました。
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では、また
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