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人に慣れていない猫にとって、病院は大変恐ろしい場所です。
パニックを起こして死ぬことがあります。
モモは、病院で恐怖のために血圧が300mmHg(血圧計の測定限界)を超えました。
通常ありえない数値です。危うく死ぬところでした。
私の知人で野良猫の世話をしている人がいます。
彼は、人に慣れていない野良猫を病院に連れて行って、これまでに2匹死なせたそうです。
手術ではなく、簡単な治療の最中にパニックを起こして死にました。
それ以来、そのような猫は病院には連れて行かず、薬だけもらう様にしています。
また元野良猫を飼っていた人によれば、白血病の元野良猫を病院に連れて行った所、治療を始めようとした矢先に、パニックを起こして死んだそうです。
このようなことが、結構起こるのです。
猫から見れば、人間は自分の体重の10倍以上ある恐ろしい生き物です。
体力では絶対にかなわない、両手で捕まえられたら身動きが取れません。
猫には病院が治療する場所であることなどわかりません。
殺されてしまうと思います。
ライオンに抱きつかれたり、大蛇にグルグル巻きにされることを想像してみてください。
その時の恐怖と一緒です。
さてモモの場合です。
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モモは、腎臓病治療のために大学病院に月2回ほど通うことになりました。
その病院は、検査や診療に飼い主を立ち会わせません。
学生の実習の様子を見られたくないのでしょう。
モモを獣医に預け、待合室で待ちます。
私は、モモの性格をよく知っているのでとても不安でした。
検査が終わって担当の獣医は、
「猫ちゃんおとなしかったですよ。血圧が300mmHgを超えています。すぐに血圧を下げる薬を飲ませた方が良いです」と言いました。
私はびっくりしました。
しかし、心臓の専門医が「いきなり降圧剤を投与すると、下がりすぎる危険があるので様子を見たほうが良い」と言って止めてくれました。この人は、とても優秀な獣医でした。
私は、猫用の血圧計を買って自宅でモモの血圧を測ることにしました。
一日に数回測定しました。
モモの血圧は、150-160mmHgほど、やや高めだけど300mmHgなどというとんでもない数値ではありません。
やはり、病院でのストレスが原因でした。
モモが検査中ずっとおとなしかったことが不思議だったのですが、理由がわかりました。
猫は、敵に自分の弱みを見せようとしない動物です。
特にモモはプライドが高いので、本当は怖くてたまらないのに、じっと耐えていたのです。
モモは、病院に行くのをとても嫌がるようになりました。
途中車の中で嘔吐するようになりました。また円形脱毛症になりました。
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ある時、検査中にモモの爪が切られてしまいました。
私に無断です。
モモはこれまで一度も爪切りをしたことがありません。
ひとりで知らない場所に連れて行かれて、無理やり爪を切られて、殺されると思ったに違いありません。
モモは、パニックを起こし、ウーウー唸っていました。
私が撫でても治りません。30分ほど唸り続けていました。
危うく死なせてしまうところでした。
私は獣医に強く抗議しました。
獣医は平謝りしました。
あれは看護師が勝手にやったのだと言いました。
獣医のくせに、動物のメンタルなことが全然分かっていない。
大切なモモをこんな目に合わされてとても腹が立ちましたが、我慢しました。
この病院が、モモの治療のために必要だと思っていたからです。
この病院に来る患者は、皆上品な犬猫ちゃんばかりです。
モモみたいな野生動物のような猫に会うのは、あの獣医も初めてだったのでしょう。
モモを病院につれて来ないで済む様に、自宅で採血し、検査だけ病院でしてもらうことにしました。
獣医は、罪の意識からか、とても丁寧に静脈注射の仕方を教えてくれました。
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また今後モモの診療には、必ず私が立ち会うことになりました。
モモは、私がそばにいると、思い切り鳴き、暴れて抵抗します。
私が助けてくれると思うからでしょう。
その時の血圧は250mmHgでした。ひとりで耐えている時は、300mmHg以上。
どれだけ辛かったのか想像できます。
思い切り抵抗しているモモを見て、申し訳ない気持ちで一杯になりました。
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