あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
二人はとても仲の良い夫婦でしたが、子供がなく、二人でさびしく暮らしていました。
おじいさんは、お百姓さんです。
その日も、野良仕事を終えて家に帰るところでした。
ふと見ると、一匹の野良猫が捕獲器に閉じ込められて泣いています。

-可愛そうなことをする。
-猫はネズミを退治してくれる守り神じゃと言うのに…。
-嫌な時代になったものじゃ。
-よし、待っとれよ。すぐに出してやるからの。
おじいさんは、野良猫を助け出してやりました。
猫は、おじいさんの方をじっと見ています。
-早うお行き。また悪い奴らに捕まるぞ。
猫は、おじいさんの言葉を聞いて、走り去りました。
おじいさんは、家に帰っておばあさんにそのことを話しました。
-それは良いことをなさいました。
でもおじいさん、どうせならその猫、うちに連れて来れば良かったのに。
-おお、そうじゃった。なんでそのことに気づかんかったんじゃろう。
その時です。トントントンと玄関を叩く音がしました。
-誰じゃろう、こんな時間に?
おばあさんが、玄関を開けると若い娘が立っていました。
-こんばんは。夜分すみません。実は道に迷ってしまったのです。。
-まあ、それは難儀をしなすったのう。今日はもう遅いからうちに泊まって行きなさい。
うちはおじいさんと私の二人っきりじゃから、遠慮はいらんよ。
おばあさんは、娘を家に迎え入れました。
娘は、おじいさんおばあさんに身の上話をしました。
-私は、幼いときに親と離れ離れになり、ずっと一人暮らしでした。
今日も、行く当てがなく、さまよい歩いていたのです。
おじいさんおばあさんは言いました。
-うちにずっとおりなさい。このようなあばら家じゃが、なんの気兼ねもいらんよ。

その日から娘は、おじいさんおばあさんと一緒に暮らすようになりました。
娘は、畑仕事を手伝います。
-お前は、野良仕事が上手じゃのう。
-はい。生まれた時からずっと野良でしたから。
- …?
おじいさんおばあさんは、実の娘が出来たようでした。
しばらく経ったある日、突然娘が言いました。
-私をしばらくの間、一人っきりで部屋にこもらせて下さい。
そして部屋の中を、決して覗かないで下さい。
理由は今は言えません。お願いします。
おじいさんおばあさんは、娘の願いを聞き入れました。
娘は、部屋にこもりっきりになりました。
おじいさんおばあさんは約束を守り、部屋の入り口に食事と水だけ置いて、ずっと待ちました。
一ヶ月半ほど経って、ようやく娘が出てきました。
三匹の可愛い子猫を抱いています。

-どうしたんじゃ?この子猫は。
-おじいさんおばあさん、これは私の子供です。
私は、あの時、おじいさんに助けてもらった野良猫です。
あの時、娘(野良猫)は身ごもっていました。
そして、部屋の中で子どもを産み、ひとりで育てていたのです。
-おじいさんが助けてくれなければ、この子らは悪い人間に殺されてしまうところでした。

-おじいさんは、命の恩人です。
-おじいさんおばあさん、私はもう行かなければなりません。
どうかこの子たちを孫だと思って、可愛がってやって下さい。
-それはもちろんじゃが、お前も一緒に居れば良いのに。
-いいえ、それは出来ません。それが野良猫の定めなのです。
おじいさん、おばあさんのことは、決して忘れません。
長生きして、子供たちと一緒に幸せに暮らして下さい。。
そう言って娘は、去っていきました。
あとには可愛い3匹の子猫が残りました。

おじいさんおばあさん、そして3匹の猫たちは、仲良く幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。
*この物語はフィクションです。
でも、実際に起こりそうな話でしょ?
今、野良猫は心無い人達によって根絶やしにされようとしています。
みなさんも、可愛そうな野良猫を見かけたら助けてやって下さい。
猫は恩を忘れません。
きっと恩返しにやって来ますよ。
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