ステロイドを使うと大抵の病気が良くなったように見えるのです。
私は生物化学が専門なので、薬の作用やメカニズムのことは多少わかります。
ステロイドはどういう薬なのか、わかりやすく説明したいと思います。
(闘病中のモモ 2021年7月)

「ステロイド」とは、
「ステロイドホルモン」の略で、「副腎皮質ホルモン」とも言い、体内の副腎皮質で作られる物質です。
また「抗ストレスホルモン」とも呼ばれ、外敵(ストレス原因)と戦うために作られる物質です。
脳を興奮させ、心拍数、血圧、血糖値を上げて体を目一杯働かせます。
シマウマがライオンに襲われる時、一瞬にしてステロイドを生成し、その血中濃度をぐんと高めます。
そして普段は絶対出せない速度で、全力疾走して逃げるのです。
人間は平和に慣れてしまって、シマウマのようにすぐにはステロイドを作れません。
お相撲さんは、土俵で相手を睨んで、しこを踏みながら徐々にステロイドを増やします。
ドーピングのスポーツ選手は、ステロイドを飲むか打つかして、手っ取り早く増やします。
ステロイドが増えると元気一杯、普段決して出せない力が出せるようになります。
しかし、シマウマにしても人間にしても、そんなことばかりしてると体がぼろぼろになってしまいます。
(闘病中のモモ 2021年7月)

ステロイドのもう一つの働きは、免疫細胞の働きを抑制することです。
免疫力を弱める、はっきり言えば免疫細胞を殺すのです。
ライオンに追いかけられている時、細菌やウイルスにかまっている暇はありません。
外敵との戦いに全力を注がなくてはならない、だから免疫細胞を抑えるのです。
この免疫細胞の抑制が、ステロイドを医薬として使用するときの主目的です。
それは、炎症を抑えるためとも言えます。
炎症は、細菌やウイルスが起こすのではなく、免疫細胞が起こすのです。
免疫細胞は、細菌やウイルス感染細胞を殺すために炎症物質を吹き付けます。
その炎症物質が自分自身の体も傷つけ、炎症となるのです。
風邪をひいてしんどいとき、我慢して起きて動いていると痛みや苦しみが減ったという経験はありませんか?
それは、活動していると交感神経が優位になり、ステロイドの量が増えるためです。
ステロイドが免疫細胞の働きを抑えるので炎症が減り、痛みが和らぐのです。
そして夜就寝すると、再び免疫細胞の働きが活発になり、ぶり返したように苦しくなる。
ステロイドは、免疫細胞の過剰な働きを抑えるために有効です。
しかし免疫細胞は、体を外敵から守るために無くてはならない細胞です。
ステロイドを使用すべきかどうかの判断は、とても重要なのです。
そのことについて、次回もう少し詳しく説明します。
(闘病中のモモ 2021年9月)

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