猫の食事は、主食が肉(魚を含む)、主菜がなくて、副菜少々というのが基本です。
ペットフード会社を探す中で、考えを同じくするドイツのアニモンダ社を知りました。
アニモンダはお肉屋さんだけあって、猫の主食は肉というコンセプトをしっかり持っています。
https://animonda.co.jp/cat-food-detail/469/
そこで、アニモンダの「フォムファインステン グルメ 鶏・牛・ニンジン」と同品質のごはんを作ることにしました。
今回は、生肉が苦手な人のために、肉はすべて加熱します。
初めに、猫に必要な栄養素について説明します。
アメリカのAAFCO(全米飼料検査協会)が作成した猫の栄養基準というものがあります。
下表の通り、猫に必要と考えられる全ての栄養素が列記されています。
日本の「ペットフード公正取引協議会」もこれを採用しており、この基準をすべて満たすフードが「総合栄養食」、毎日食べ続けても健康が維持できるとしています。
鶏モモ肉の栄養素をAAFCOの数値と比較すると、下表のようになります。
赤字で示したものが、必要量に満たない栄養素です。
この様に、一つの食品だけではどうしても足りない栄養素が出てきます。
フードメーカーは、どうやっているのでしょうか？
ペットフードの原材料の欄を見ると、例えば、
「穀類(小麦、米、とうもろこし)、肉類（鶏、豚肉）、動物性油脂、植物繊維、酵母、アミノ酸類（リジン、タウリン、メチオニン、アルギニン）、ミネラル類（カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、塩素、亜鉛、銅、鉄、マンガン、ヨウ素、セレン）、ビタミン類（E、A 、D、ナイアシン、ビオチン、B1、B2、パントテン酸、コリン、B6、B12、葉酸）、酸化防止剤（ミックストコフェロール、BHA）」
というように、多い順に並びます。
上記「穀類(小麦、米…鶏、豚肉…酵母」までが食材です。
しかし、それだけでは、栄養素が足りません。
そこでリジン、タウリン、メチオニン…亜鉛、銅、鉄、ビタミンE、A、D…B6、B12、葉酸などAAFCOに記されている栄養素を添加します。
こうやって、AAFCOの数値をクリアするのです。
アニモンダはどうでしょうか？
「フォムファインステン グルメ 鶏・牛・ニンジン」https://animonda.co.jp/cat-food-detail/469/
「原材料：肉類(鶏、牛、七面鳥、豚)、野菜(ニンジン)、ミネラル類、ビタミンD3」
添加物は、ビタミンD3とミネラル類だけです。
素晴らしい。
ミネラル類は、基本的に天然由来なのでほぼ添加物なしと言えます。
肉類だけでほとんどの栄養素を摂る事ができるのでしょうか？
実はとっておきのものがあるのです。
レバーです。
レバーには、驚くほどたくさんの栄養素が含まれています。
鶏レバーの場合、不足しているのはカルシウム、ヨウ素、ビタミンEだけです。
アニモンダがレバーをよく使用するのは、そのためです。
しかし、レバーはあまりたくさんは使用出来ません。
色々理由がありますが、ビタミンＡの量がめちゃくちゃ多いのです。
ビタミンＡの過剰摂取は、脳などに障害が出て危険です。
お肉屋さん気質のアニモンダさんは、肉を色々組み合わせて栄養基準を満たす努力をしています。
そして最終的に、ビタミンDと銅、亜鉛、マンガン、ヨウ素が足りませんでした。
そのため、「ビタミンD3 170 IU、銅アミノ酸水和物 0.8mg、硫酸亜鉛一水和物 9.6mg、硫酸マンガン一水和物 1.2mg、ヨウ化カルシウム 0.08mg」を添加しました。
それでは猫のごはん作りです。
「鶏もも肉」をメインとし、レバーなど他の肉を加え、副食的に動物性食品、植物性食品を加えます。
私も、アニモンダさんと同じ手法で、肉を中心とする食品を組み合わせ、どうしても足りない栄養素だけを補いました。
検討する上で、欠かせないのは以下の資料です。
「食品栄養成分データベース」 https://food-composition.info/
「日本食品標準成分表2020年版（八訂）」
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
これにほとんどの食品の、栄養素が詳しく記載されています。
タウリン、コリンについては、以下の文献などを参照しました。
https://www.vetmed.ucdavis.edu/sites/g/files/dgvnsk491/files/aal/pdfs/spitze.pdf
https://en.wikipedia.org/wiki/Choline
私が用いた食材は、鳥モモ肉、豚肉、鶏レバー、卵、ひじき、ヨーグルト、アーモンド、卵の殻です。
しかし銅とマンガンがどうしても足りません。
DHCの「マルチミネラル」という商品があったのでそれを使いました。
私はネットで、cookpadなど料理のレシピをよく見ます。
簡単で、とても便利です。
その要領で、猫のごはんのレシピをご紹介します。
材料 ・鳥モモ肉皮付きミンチ 140g
・豚肉ミンチ 40g
・鶏レバー 33g
・ゆで卵 54g
・ひじき 39g
・プレーンヨーグルト 16.4g
・アーモンド 15.3g
・卵の殻 1.0g
・DHC「マルチミネラル」 1.0g
このごはんの栄養素は、下表の通りです。
この通り、すべての栄養基準を満たしています。
アニモンダ「フォムファインステン グルメ 鶏・牛・ニンジン」と比較してみます。
「猫のごはん」
乾燥重量 蛋白質52.4%、脂肪36.2%、粗繊維3.1%、粗灰分5.6 %、その他2.4％(炭水化物2.3％)、タウリン0.306%
アニモンダ「フォムファインステン グルメ 鶏・牛・ニンジン」
乾燥重量 蛋白質55.5 %、脂肪25.0 %、粗繊維2.8%、粗灰分10.0 %、その他6.7％(炭水化物5.6％)、タウリン0.305%
栄養素的に、ほとんど差異はありません。
＊炭水化物(ここでは食物繊維以外の炭水化物)について。
前回アニモンダの炭水化物を実質ゼロとしましたが、植物繊維源としてニンジンを使用しており、ニンジンには植物繊維の2倍量の炭水化物があるので、今回は5.6％としました。
炭水化物は大抵の食品に多少は含まれており、意図的に使わなくてもどうしても紛れ込みます。
問題になるのは数10％を超える場合です。
最後に値段です。
アニモンダの「フォムファインステン グルメ 鶏・牛・ニンジン」は、１個が100g入り水分82%で330円です。
「猫のごはん」はどうでしょう？
原材料の値段は、
鳥モモミンチ(100g120円)、豚肉ミンチ(100g130円)、鶏レバー(100g40円)、ゆで卵(100g40円)、ひじき(100g130円)、プレーンヨーグルト(100g32円)、アーモンド(100g263円)、卵の殻(タダ)、DHC「マルチミネラル」(1g11.4円)。
今回作った338g(水分70.4％)に掛かった原材料費は353円です。
アニモンダの水分82％と同じにすると、556gになります。
100gの値段は63円、アニモンダの5分の1です。
欧州の高級フードの中で最も信頼性の高いアニモンダと同じグレードのごはんが手作りだと5分の1の値段で出来ちゃいます。
味も多分良いと思いますよ。
次回は、ごはんの作り方と猫たちの感想をお伝えします。
尚、今回のごはんは、成猫用です。
AAFCOには、子猫用の別の基準がありますので、子猫用のレシピはまたいつか作ります。
ぺったん したユーザ
ぺったん
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