初めての里親募集（３）

2012年11月14日(水) 514 / 0

　隣に住む９０歳を過ぎても一人暮らし、何でもできるお爺ちゃんの庭にはいつも野良猫がいた。じゃれ合う子猫や乳をやる優しい母猫の姿を窓越しに見るだけで、直ぐそこに愛らしい姿があるのに手の届かないのが猫だった。

　そんな猫が天から降ってきたように私の目の前で鳴いていて、私に命をあずけてくれた。４０才を過ぎてちょっと疲れた私に生きる力と新しい世界と学びを与えてくれた猫。

　猫を育て始めてまだ１年、銀が来て、ミイが来て、庭の子猫達を自分が幸せにしてあげる自信が無かった。
　この子達を幸せにしてくれる人、それだけが里親になってくれる方への願いだった。

　里親募集を掲載して、直ぐに希望があった。メッセージに誠実に書かれた文章を見て、本当に嬉しかった。
　姉妹の猫を引き離すことができず、実家で２匹の里親を経験したことがある。どの子も可愛くて選べない、猫が大好きと。

　私は庭のクリーム姉妹２匹を引き離すことが辛かったし、姉妹で育ててもらえるならこの方にしようと思った。

　２匹でもいい。雄雌、どちらでも大好きとの返事だった。

　私は、直ぐに２匹を病院に連れて行った。性別もはっきりしときたかったし、この子達に出来るだけのことをしてあげたかった。無責任なことはしたくなかった。
　
　「こんな可愛いかったら直ぐに決まりそうやね～！里親さんはくれぐれも慎重に対応してね～！いろいろ聞くから」

　病院の先生にそう言われても、私の子猫を希望してくれてる方はそんな心配はいらないな、と思いながらフワフワの子猫を大切にキャリーに入れた。

　でも、何となく心に引っかかっていた。
　大丈夫やけど念には念を入れてみよか…先生の言葉にも大切な意味があるんやし。無視はあかんな！やってみな。

　
　家に帰って、同じ地域の里親募集を何気なく一つずつ見ていった。
希望ユーザーが重複してる。なんで？ここにも、ここにも…なんで？
　
　えっ！私の話と平行してなんで希望出してるん？
　この家の子になって、ほんまに幸せになれるん？

　血の気が引いた。何が起こってるのか？頭の中がグルグル回った。

　家族に相談しよう。できるだけ色んな人に訊いてみよ。
　私、分からんようになってもた…

　ちょっと待ってもらい。と母が言った。

　　

　

　

　