毎夜、猫たちは集会と称して、泉の近くにある広場に集まって来る。
今日はどんな猫がやって来ただの、誰が天国へ上って行っただの、三々五々集まり、世間話をするのだ。そうすることで、情報交換をしていた。
夜になり、三匹は広場の近くの通り道に身を潜めレオを待っていた。他の猫たちに気付かれないように誘い出し長老のもとへ行く為だ。
しばらくするとチャーミーよりも少し年上のミックスの茶白のオス猫がやって来た。レオだ。
真っ直ぐに前を見ながら、落ち着いた物腰で歩いている。
通り過ぎるとき草陰に隠れていたチップが小さな声で呼びかけた。
「レオさん、レオさん」
名前を呼ばれたレオは立ち止まり、辺りを見回した。
しかし、隠れているチップに気付かず、気のせいと思ったのか首を傾け後ろ足で耳を掻くと、何事も無かったように歩き出した。
二、三歩行くと今度は地面でちょろちょろ動く毛の塊があった。猫の習性としてチョロチョロ動くものには興味を引かれる。
塊は草むらを出たり入ったりしている。レオの目が釘付けになり、立ち止まっている。猫パンチをしようと手を出すと、草むらの中から声がした。
「レオさんこっち」
今度は気付いた。レオが声の方へ入っていくと、チャーミーが長いシッポを振っていた。レオの注意を引くためにおとりになったのだ。
「どうしたのです、チャーミーさん」
がっかりした表情でレオが近付いてきた。
「やっと気付いてくれた。大変な事が起きているの。一緒に長老のところまで来てくれない」
レオを引き込む事に成功したチャーミーは安堵していた。
「うかつにも私とした事が。このような見え透いた作戦にだまされるとは、情けない。仕方ありません、私ごときがお役に立つならお伺いしましょう。どうしたというのです」
レオは前足をきちんと揃え、悔しさを隠し話している。
「泉の水が減ってきているんだ」
そこへ、チップがやって来た。
「今から、泉を見てくれませんか。それから長老のところへ」
チョコもお願いしている。
「泉の水が……。神秘の泉ですか? まさか、そんな事はないはずです」
レオが三匹を見回した。しかし、その気持ちを裏切るように三匹は首を振っていた。
「分かりました、見てみましょう」
みなの深刻そうな顔を見たレオはすぐに立ち上がり、チップを先頭に泉へ向かった。
すでに多くの猫たちが集会に行き、泉の周りには誰もいなかった。
泉では現世で見ることも少なくなったホタルが飛び交っていた。レオはホタルの灯を頼りにしている。
「ホタルさん、もう少し集まって頂けませんか」
レオはホタルたちを呼び集め、水面を照らしてもらった。
「確かに低くなっていますね。いつもは泉の底から湧き出る七色の輝きが見えるのに、今は時々鈍く光る程度でとても水面まで届かないようです。何か暗くひっそりと眠っているように見えます」
「やはり少ないですか」
チップが泉の様子を確認している。
「ええ、いつもなら疲れた体であってもここへくると力がみなぎり、鋭気を養うことができるのです。しかし、今日は体の底から湧き上がるような活力が出てこない気がします。私のような老人は特に敏感に感じます。間違いないでしょう。なみなみとたたえられているいつもの状況ではありません。ご覧なさい、いつも水があるところは岩の色が違うでしょう」
レオが鼻先で水面を指している。
「今はそこより低くなっています。ホタルたちの灯も暗く元気がないように感じるのは気のせいだけではないのでしょう。何かが起こっている。長老はそれを心配しているのですね。分かりました。すぐに行きましょう」
レオの目が険しいものに変わっていた。やはり大変な事が起きているようだ。
「長老のところへ戻ろう」
チップが皆に声を掛けた。
四匹は、集会に来ている猫たちに気付かれぬよう、静かに丘陵を下り始めるのであった。
そこには、水面を通り抜けていく神々しい風もなく、凛とした張り詰めた感覚もなかった。ただ、ひっそりと佇む泉があるだけだった。
つづく
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
いかがでしたか、今回のお話。
新しい登場猫さんがいましたね。
OKさん!ちのレオ君です。
賢そうな、落ち着いた感じです。
いかがでしたか。
さて次回は、亡くなった猫たちが現世でかかわりがあった人たちが今どうしているかを見ることが出来る場所の話が出てきます。
そう、向こうの世界からそっと我々を見ていてくれる場所です。
今、自分の中にあるその場所の名前がいまいち馴染めないのです。
そこで、お願いです。皆さんでその場所の呼び名を考えて下さい。
どのような場所かという期待でもいいですよ。
色々と想像してみてもらえないでしょうか。
私の貧相なイメージが変わるかもしれませんので。
宜しくお願いします。
次回もお楽しみに。
『キター顔♪』
我が家にもついに来ました。

でも、何か普通。

もう少し崩れた顔を探してみよう。
再度、キター顔ゲットしようと思ったら、先着一万人終了したそうです。残念。
今回のが滑り込みセーフだったようです。
では、また。
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