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平成17年夏に猫を保護してより飼育中の初心者です。

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日記連載創作猫物語、「虹になるまで」 第四話 その二
2009年7月11日(土) 474 / 20

             二

 三匹は小鳥たちに導かれ、泉から続く森の中を進んでいた。

 鬱蒼と茂った樹々が行く手を阻んでいる。重く垂れ込めた雲と相まってあたりは夕暮れのように暗かった。

 もうずいぶん歩いていた。

「レオさん、こんな、奥の方まれ、来たこと、あるの、れすか」

 チップは先頭を歩きながら、後に続くレオを振り返っている。

 その声が辛そうにろれつが回らなくなっている。

「ずっと昔に、この辺りまでは、来たことが、あります。しかし、これより、奥へは、行ったことが、ありませんね」

 高齢のレオも息が上がっている。言葉が途切れ途切れだ。山道は辛いものがあるのだろう。

「小鳥さん、まら、かな」

「もう少し先の方だよ」

 先導する小鳥が言った。

 朝から歩き続けている為か三匹の足取りは重くなっていた。

「チップちょっと休まない」

 しばらくして、先頭を行くチップの後に続くチャーミーが声を掛けた。

「レオが遅れ始めているから。それにチップも変よ」

 レオはさらに後ろのほうにいた。休み無く森の中を歩き続けた体力は限界に達していたようだ。

 チップは立ち止まりレオを待っている。

 チャーミーは振り返ったチップの顔を見て驚いた。

「チップ、どうしたの。よだれで口の周りがビチョビチョじゃない。子供みたい」

 チャーミーの問いかけにチップは首を立てに振るだけで、半開きの口から言葉は出てこなかった。

「口がどうかしたの」
 
 言いながらチャーミーはチップの口の中を覗きこんでいた。

「わあ、真っ赤にただれているよ」

「口内炎じゃないのですか」

 やっと追いついたレオも肩で息をしながらチップの口の中を見ている。

「これは酷い。話す事も出来ないでしょう。痛くて唾液も飲み込めないのではないですか」

 レオは無言でうなずくチップを痛々しそうに見ていた。

「泉から随分離れた為、我々も現世での傷ついたり、老いたりした体に戻りつつあるようです。もうこの辺りが限界かもしれません」

 そう話すレオの表情にも疲れが見えた。

「ヤマネコのテリトリーには入っていると思うのだけど。姿が見えないな」

 道案内をしていた小鳥が休憩するチップたちの上空を飛びながら見回している。

 チップは、半開きの口からだらしなく唾液を流しながたままだ。

 チャーミーは立ち上がり森の奥を見つめている。

「ヤマネコさん。もし近くにいるのなら良く聞いて。あなたが咥えて来た仔猫は、まだ亡くなっていなかったの。現世に命を残したままここへやってきてしまったようなの。それで丘陵を潤してきた泉の水が減っているわ。ここに来て元気になっていた猫たちが、現世での傷ついた体、病気で苦しんでいた体に戻っていくの。何とか仔猫を現世に戻すために力を貸してくれない。仔猫が現世に戻れば丘陵も、猫たちも、もとの元気な姿に帰る事が出来るはずだから。お願い」

 チャーミーが喋れないチップに代わり、森の中に隠れているだろうヤマネコに向かって大きな声を出していた。

 しかし、どんなに耳を凝らしても森の中を通り抜ける風に揺れる樹々の葉の音が聞こえるだけだった。しんと静まり返ったまま小鳥たちのさえずりさえ聞こえて来なかった。

 もしかしたら来てくれるかもしれない。そんな淡い思いで、三匹は座って静かに待ってみた。

 しばらくして、今度はレオが立ち上がり森の奥に向かって話しかけた。

「私は、レオと申します。丘陵から離れた森の奥に来て、水の力が弱まり、現世での年老いた体に戻りつつあるようです。もしかするとあなたもすでに体に変調が来ているのではないでしょうか。ここは随分と泉から離れています。体調が悪ければ早く泉の水を飲むことです。必ず元気になります。信じて下さい。まだ、亡くなって日が浅く我々の言葉が信じられないかも知れませんが、誰もあなたの敵ではありません。安心して姿を現して下さい」

 その時だ、三匹の背後から突然何者かが襲いかかってきた。

 一番後ろにいたチップの体に一撃を食らわして何も言わずに森の奥に走りこんで行った。

「うっ」

 チップは呻き声と共に倒れ込んでしまった。

「あ、あれは」

 チャーミーが驚いて立ち尽くしている。

「ヤマネコだ。何て事を。足を引きずっていたようにも見えたが。大丈夫ですか、チップ」

 レオは心配して倒れこんだチップを覗き込んだ。

 チップは頷き、よろめきながらも立ち上がった。その首筋に
は大きな爪あとが残されており、血が流れていた。

「大変だ、血が流れています。早く泉に帰って水をつけなければ。仕方ない、ここは引き上げましょう。でないと動けなくなりますよ」

 レオはチップとチャーミーを促した。

「歩ける、チップ」

 チャーミーが心配そうに見ている。

「それにしても、ヤマネコは我々になぜこうまで敵意をむき出しにするのだろうか」

 レオがチップの様子を気にしながらつぶやいていた。

 なんとか立ち上がったチップは、後ろ髪を引かれる思いで何度も振り返りながら坂道を下り始めた。チップのキジトラ模様に血が流れ、めらめらとぬめっている。足取りは重く苦しそうだった。

 チップをいたわりながらもチャーミーは振り返り、森の中の
何処かに潜むヤマネコを睨んでいた。

「わからずや。アンタなんか森の奥で動けなくなればいいのさ」

 憎しみを込めたチャーミーの声がヤマネコの潜む森の奥に空しく吸い込まれていくのであった。


つづく


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 いかがでしたか、今回のお話。

 いよいよ森に入っていきましたね。

 せっかく出てきたヤマネコ、まさかこんな展開になると予想しましたか。

 チップは大丈夫でしょうか。

 賢いレオと優しいチャーミーが付いています。

 とにかく泉まで戻ってきてほしいです。

 どうなるのでしょう。

 御期待下さい。

 次回もお楽しみに。


 さてさて、主の大阪出張はなんとか無事に終わったようです。

 駅員さんに聞きながら、地下鉄の乗り換えも間違わずに出来たようですよ。入り組んだ地下鉄に田舎者の主は目を白黒したようです。

 ついた日に「なんばグランド花月」で吉本を見て来たということです。

 笑いの原点を見たと言っておりました。

 大阪のパワーは笑いにあったと感慨深げでした。 


 主役のチップは疲れ気味です。


      



 では、また。

Byホワイト
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