ゲンさんちの猫

40代 男性 ブロック ミュート

平成17年夏に猫を保護してより飼育中の初心者です。

日記検索

最近のコメント

ゲンさんちの猫 さん
ゲンさんちの猫 さん
ゲンさんちの猫 さん
ゲンさんちの猫 さん
心&美々 さん
チャムりん さん
グレ さん
sizu9 さん
精霊流し ゲンさんちの猫 さん
精霊流し ゲンさんちの猫 さん

My Cats(2)

}
チップ

チップ


}
ホワイト

ホワイト


もっと見る

ゲンさんちの猫さんのホーム
ネコジルシ

日記連載創作猫物語、「虹になるまで」 第七話 その三
2009年10月24日(土) 453 / 12

             三

 ヤマネコはもう一度、前足を揃え意識を仔猫に集中した。

 丘陵に来る前、橋のたもとで見つけた仔猫。

 もしかしたら我が子でないかと疑い一度は咥えてみたが、毛並みの違いに橋の途中で捨てようかとした仔猫。

 あの仔猫が現世でまだ生きている。

 仔猫を連れて来たために丘陵に異変が起こってしまった。すべて自分が引き起こした事だ。せめて今がどのような様子なのかを教えてあげなければ、チップから助けて貰った恩に報いる事ができない。



 しばらくすると白いレースのカーテン越しに見るように景色が浮び上がって来た。

「見えてきた。飾り気のない白い部屋だ。どこだろう」

 ヤマネコは前を向いたまま、レオに聞こえるように話している。

「はっきりしてきたぞ。檻のようなものがある。まさか捕まっているのだろうか。いや違うなあ、開けっ放しになっている」

 ヤマネコが頭を傾げて考えていた。

「いた。仔猫だ。間違いない。柄といい大きさといい。俺が咥えてきた仔猫だ」

 少し興奮気味に言葉をうわずらせている。

「あっ」

「どうしました」

 言葉に詰まったヤマネコにレオは驚いた。自分も出来ることなら一緒に現世を見てみたい。しかし、橋の向こうでピースに接触が無かったレオにはどうすることもできない。固唾を呑んで見守るしかなかった。

「檻の中に寝かされている仔猫にチューブが刺さっているんだ。人間がいる。人間の仕業だ。白い服を着た人間がいる。仔猫の体に触っているぞ。とんでもないことをしているのかもしれない」

 ヤマネコがうろたえ出した。

「慌ててはいけません。もっと大きな気持ちで見るのです。全体を。一方からだけ見てはいけません。落ち着いて」

 レオはヤマネコが我を失い現世が見えなくなる事が心配だった。自分自身の焦る気持ちを悟られないように、ゆっくりと話した。今はピースの正確な状況が必要なのだ。

 ヤマネコは大きく息をして、気持ちを落ち着かせようとしている。

「横に女がいるた。仔猫の手を握り締めている。何をしているのだろう。仔猫に刺さったチューブはケージの横にある透明の袋から繋がっている。これは何だ。見たことないものだ」
 
 ヤマネコの言葉でレオにはおぼろげながら現世の様子が分かり始めた。

「そこは病院ではないでしょうか。ピースがいるのは檻ではなく、ケージの中に寝かされているのでしょう」

「病院?」

 山で暮らしていたヤマネコには病院の中の様子は始めて見るものだった。そこが何をするところなのか見当もつかない。

「傷ついたり、病気になった動物達を元気にしてあげるところです。仔猫は人間によって賢明に治療してもらっているのではないでしょうか。横にいる女の人が仔猫の飼い主かもしれません。生きてくれる事を祈り、手を握りしめているのでしょう。今なら、間に合いますよ。すぐ仔猫を現世に戻してあげましょう。急がなければ」

 しかし、ヤマネコはそこから動こうとしなかった。

「どうしたのです」

 レオは心配しヤマネコの様子を伺った。

「人間が猫の為に祈り、治療するなんて。そんな事が……」

 ヤマネコは言葉が続かないでいる。そこには、近寄りがたい雰囲気があった。

 レオが見つめていると、ヤマネコの体から黒い霧のようなものが抜け出してきた。

 頭上に漂い、しばらくすると空中で弾け消えた。まるで今まで持ち続けていた人間に対する憎しみの気持ちが抜け出てきたようだった。

 ヤマネコはレオを振り返った。その顔にはもう涙はなかった。隙を見せないようなギラついた表情はなく、穏やかなものだった。

「チップのところへ急ごう」

 ヤマネコが言った時だ。見返り岩より少し下手の方にある広場から猫たちの争う鳴き声が聞こえてきた。

「何だ、今のは」

「広場の方からです。何があったのでしょう。行ってみましょう」

 二匹はすぐに立ち上がり、駆け出すのだった。


つづく

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

いかがでしたか、今回のお話。

 ついにピースの現世での様子が分かりましたね。

 皆さんが想像されていたようなものだったでしょうか。

 どうやら病院で治療を受けている模様です。しかし、予断を許さない状況のようですよ。

 早くしないと。


 ついにヤマネコの人間に対する憎しみが消え去ったようです。

 良かったですね。

 でも、新たな事件が。どうなるのだろう。それはまた次回。  
お楽しみに。



 さて、「長崎ねこ」学会ではシンポジウムが開催されるらしいですよ。

 お近くの方は参加してみてはいかがです。

http://www.nagasakineko.com/symposium2009.html 

 朝夕がすっかり寒くなり、僕たちもこんなにくっ付いています。

     


Byホワイト
0 ぺったん
ぺったん ぺったん したユーザ

ぺったんするにはユーザログインが必要です。

ログイン・ユーザー登録
 ぺったんとは

日記に共感した時に、投稿者へ思いを伝えられるのが「ぺったん」にゃ。
気軽にご利用くださいにゃ。
レッツぺったん!!

※誰が「ぺったん」したか公開されますムーチョ

Facebookでシェア Twitterでシェア はてなブックマークに追加
コメント([[comment_cnt]]件)
削除されました

[[parent.data.user_name]] [[parent.data.user_name]]
[[parent.data.create_date_disp]]
ID:[[parent.data.ip_hash]]
削除

[[child.user_name]] [[child.user_name]]
[[child.create_date_disp]]
ID:[[child.ip_hash]]
削除

ぺったん ぺったん したユーザ

[[user.user_name]] [[user.create_date]]

ゲンさんちの猫さんの最近の日記

皆様お元気ですか。  雨、雨、雨。それも土砂降りの雨。  最近は雨ばかりです。  今日は久しぶりに真夏の太陽が顔を出しています。  我が家のホワイトも雨の日は外に出ることが出来...

2011/08/27 768 8 0

精霊流し

 皆様、お久しぶりです。  こちらは皆元気に過ごしております。  ええ、もちろん車庫猫親子も時々顔をだしております。  さて、早いものでチップが虹の橋を渡り半年が過ぎました。 ...

2011/08/19 880 10 0

だ、脱走!

皆様、お久しぶりです。  タイトルを見て驚かれた事でしょう。  あれは、先週のことでした。  梅雨の晴れ間という事もあり、ホワイトを朝からテラスに出してあげました。  出掛けるとき...

2011/06/12 956 8 0

結果報告

 最近は忙しさに、日記が月記になってしまっています。  まとめて最近の話題を御報告いたします。  皆さんが一番気になる公募の結果報告。  とはいえ当然の結果として、一次予選落ちでした...

2011/05/27 871 8 0

その後の車庫猫家族

 前回車庫猫家族の御報告をさせていただきましたが、その後は姿を見かけません。  きっと家猫としてお世話をしてもらっているのではないかと勝手に推測しております。  そこで、前回御紹介できなか...

2011/04/14 889 6 0

御報告

 早いもので今日から新年度の四月になりました。  劇団の公演が終了したら御報告をさせていただきますと言っておきながら、あまりにも甚大な災害が起こったために躊躇しておりました。  被害に遭わ...

2011/04/01 734 16 0

お礼と報告

 チップが亡くなって49日が過ぎました。  その節は、皆様から、暖かい励ましの言葉、心のこもったお悔やみの言葉を頂き、本当にありがとうございました。  どれ程気持ちが休まり、救われたことで...

2011/02/28 714 14 0

訃報

 昨日、午前10:30にチップが永眠致しました。  野良として5~6年。我が家へ来て5年半。約12年の生涯を終え旅立ちました。  昨年秋、腎不全を発症し虹の橋手前で引き返してきたチップ。  ...

2011/01/11 943 31 0

謹賀新年

あけまして おめでとう ございます    昨年は虹の橋の手前まで行ったチップ。  良き先生の処置とアドバイスにて、何とか年を越すことが出来ました。  随分と痩せましたが、自宅点滴でどう...

2011/01/03 809 15 0

ゲンさんちニュース 第11号、「再会」

 ゲンさんちから久しぶりにニュースが届きました。  9月22日以来消息を絶ったままだった車庫猫家族。  車庫猫本人は近所で数回に渡り目撃はされていました。  しかし、そのときも子猫の...

2010/10/25 798 12 0