猫を飼うための最低限の条件

一人暮らしの方や家族がいる方、過去に猫と共に生活していた方や初めて猫との共同生活を送ろうと決心した方。様々な背景や思いから猫との生活を決めた方がいらっしゃるかと思いますが、猫を家族として迎え入れるには、まず最初に満たすべき基本条件があります。

これらの条件は、猫との共同生活を円滑に進めるために不可欠です。飼い主としての責任を全うするためにも、事前に十分に確認しましょう。

家族は賛成していますか?

一人暮らしの方はご自身の意思で決めるだけですが、家族と共に生活している場合は家族全員の意思が重要です。

猫アレルギーや動物が苦手という家族がいる場合は、その家族の意向を無視せずに尊重しましょう。猫を飼いたいという気持ちは素晴らしいことですが、家族に無理を強いてしまうことには注意が必要です。トラブルの原因にもなりかねません。

本当に飼っても大丈夫ですか?

この際に、猫を室内飼いにするのか、室外にも出すのか、または散歩程度に制限するのかといった話もしておくと良いでしょう。年代によっては、室外飼い(放し飼い)が良いと考える方もいらっしゃいます。

室外飼いをする場合、猫が外でのコミュニケーションを楽しむことができる反面、喧嘩や病気、交通事故などのリスクも増えます。それに対して、室内飼いをする場合のメリット・デメリットや、散歩をする場合の注意点についても話し合い、家族全員の同意と理解を得て猫を迎えましょう。室外飼いと室内飼いの詳細については、こちらでも説明しています。

猫が飼える住まいですか?

家族が賛成していても、住まいがペット禁止の場合は猫を飼うことはできません。また、「ペット可」と表示されていていても、犬は飼育可能だが猫は飼育禁止というケースもありますので注意が必要です。

猫の飼育が許可されているか不明な場合や不安がある場合は、事前に確認しておくことが安全です。「飼育禁止だけど皆飼ってるから」という考えで猫を飼うことは、後にトラブルの原因になる可能性が高く、猫にも不幸な結果を招くことがあります。

猫が飼える住まいですか?

そのような事態を避けるためにも、飼い主として責任を持って確認しましょう。もし飼育が禁止されている場合は、諦めることが賢明です。それでもどうしても猫との生活を望むのであれば、猫を飼える住まいを探すなど、環境を整えてから猫を迎え入れましょう。

住まいを借りる際の注意点

猫を飼える住まいを探す際に、いくつか留意すべき点があります。住まい自体に対する注意点と、猫が怪我や命にかかわる事態を避けるための対策です。注意点を把握し、飼い主としてできる予防・対策を講じましょう。

爪研ぎに対する対策

猫は自然に爪を研ぎます。壁が傷だらけになると、引っ越し時に問題が生じることがあります。こまめに爪切りを行うのはもちろん、壁に保護シートを貼る、スプレーで爪研ぎを防ぐ、猫に特定の場所で爪を研がせるように教える、爪研ぎの素材や配置を工夫するなど、対策が求められます。

臭い対策

猫自体は臭くありませんが、排泄物は強い臭いを放ちます。猫のトイレは定期的に掃除し、住まい全体もこまめに換気しましょう。猫がトイレ以外の場所で用を足すことを防ぐためにも、清潔な環境を維持することが重要です。室内飼いの猫の脱走防止対策を十分に講じた上で換気を行ってください。

危険な部屋への対策

事故につながる可能性のある危険な部屋には、猫が入らないようにするか、入っても安全に過ごせるように対策を講じましょう。

  • キッチン

    誤ってコンロをつけたり、高い場所から降りる際に家電のスイッチを押したり、物を落とすことがあります。キッチンへの立ち入りを制限するか、使用しない家電のコンセントを抜いたり、出ている物を片付けるなどの配慮が必要です。

  • 浴室

    換気扇のない家でドアを開けたままにしていると、猫が入って浴槽のフタに登り、落ちてしまう事故が起こることがあります。猫が立ち入らないようにするか、浴槽に水をためないようにするなどの対策を取りましょう。

費用を把握していますか?

費用には初期費用と生涯費用があります。初期費用も生涯費用も猫との生活において重要な費用です。表示されている値段は一般的なもののため、お住いの地域の情報はご自分や猫友に聞いて、情報収集しましょう。

費用を把握していますか?

初期費用

性別や性格、病気の有無、また行く病院によっても多少の増減はありますが、一般的に初期検査やワクチン接種、生活用品の購入で約20,000円、さらに去勢や避妊の手術をした場合は更に20,000円程度かかることもあります。

初期検査やワクチン接種は、里親募集の際に保護された猫に対してすでに対応されていることがあり、後でお支払いすることがあります。なお、ネコジルシでは里親募集中の猫の詳細ページに「譲渡費用」という項目が表記されており、保護されている猫の場合はその初期費用などの料金を請求することができます。飼い猫の場合や保護団体の場合で請求できる内容が変わるため、詳しくはこちらからご確認ください。

応募時に不安な状態で応募や譲渡を行うとトラブルの原因になります。もし不安なことがある場合や詳細を聞きたい場合は、相手にしっかり確認を取り、不安や疑問がないようにしましょう。

生涯費用

費用には、フードや猫砂などの必需品から、おやつやおもちゃなど定期的に購入する可能性のあるもの、定期的もしくは臨時で発生する医療費が含まれます。一般的に15年生きた場合、生涯費用は80万~130万程度で、そのうち約4分の1が医療費にあたると言われています。

もちろん健康管理に気を付けて臨時の支払いを少なくするよう努めることも大切ですが、病気やけがはいつ起こってしまうか分かりません。どんなに気を付けていても起こってしまうことはあるので、何か急な出来事があった時に払えるのか、もう一度考えてみましょう。

生涯一緒にいられますか?

猫はもちろんですが、あなたにも何が起こるかは分かりません。猫がもし病気になってしまったら、あなたはしっかりとお世話をすることができますか?逆にあなたに何かが起こった時、見てくれる人や頼れる預け先はありますか?

猫はぬいぐるみではありません。命が宿っています。性格もあるので必ずしもあなたに懐くとは限りませんし、大人になった時に性格が少し変わるかもしれません。その変化さえ可愛いと受け入れられますか?

生涯一緒にいられますか?

もし写真を見ただけで不安だったり、今の保護主さんには懐いているけど自分との相性はどうなのだろうと思ったのであれば、募集者さんと話し合ってください。何度か会いに行けるのであれば実際に会いに行って相性を見たり、トライアル期間をいただけるのであればトライアルをして判断してください。子猫の場合は早いうちに一緒にいることで慣れてくれるかもしれません。焦って探しても良いことはありませんので、あなたのお家に来てくれる猫と一生一緒にいられるような環境を作りながら、焦らずゆったりとした心で待ちましょう。

著者紹介

上杉 華子(猫コンシェルジュ)

猫に関する専門家として猫の知識と経験が豊富で、猫の飼い主たちから高い評価を受けており、
猫の行動学や猫種の特徴、猫の健康や栄養管理など、猫に関する様々なトピックについて情報発信。
猫に関する情報が科学的根拠に基づき、そして分かりやすい言葉で説明していることを心がけ、猫の世話やしつけ方法、猫の病気や予防策についてのアドバイスを提供しています。
幼いころから猫を飼って育った自身の経験をもとに情報発信を行い、保護猫の里親探しや猫の福祉向上を目指して活動中。