第64回 私は今ほのかな気分「おかしなネコの物語」
こんにちは。11月ももう終わり。
そろそろ冬本番がやってきますねぇ。
猫の暖かさが身に染みる季節。
猫も人間も、体調には気をつけて
これからを過ごしましょう。
今回のえりかのコラムは
「おかしなネコの物語」のご紹介。
ごゆっくりご覧ください。
そろそろコラムのネタ本を探そうかな、と
思っていたら、ホレという声と共に
目の前にこの本が置かれたあの日。
コラムの神様が降臨して下すった、と
感動して振り向いたら、そこに立っていたのは
何のことはないうちのinfでした。
たまーにこうやって本を仕入れてくれる。
今までのコラムにも、この人がこうやって
ホレという声と共に仕入れてきた本の
レビューが載ってます。ありがたいことです。
んで、その本「おかしなネコの物語」というエッセイ本。
何の前情報も無しに読んでみました。
すごい薄い本なんですよ。
1センチあるかないか。
著者の名前も今まで見たことがなく、
不勉強な自分を恥じ入るばかり。
今まで私が出会ってきた本とは
ちょっと様子が違うこの本。
だからこそ、いろいろと
わくわくして読んだんです。
そしたらですね。
その感情を裏切らない軽妙な文体や、
洒脱な言い回しなどがたくさんで
何この著者ステキ!と、ちょっと
いろいろ調べてみたら、
なんとこの方1906年生まれ。
102年も前に生まれた方だったんです。
そしてこの「おかしなネコの物語」が
出版されたのは1980年。
その前後に書いたものをまとめて
出版したとして、この本の文章は
74歳前後に書かれたものと思われますが、
とてもとてもそのお歳で書かれた文章とは
思えません。ほんとに思えません。
ほんとはね、「読んだら年齢調べてみ」と
書いてコラムを〆ようと思ったのですが、
あんまりびっくりしたから書いちゃう。
途中まで普通に読んでいて、
「戦争が終わって間もない頃、
兵隊から返されてくると」
という一文があったため、ガバと跳ね起き
早速著者の名前で検索開始。
いやー、年季が入った猫好きさんだったんですね。
猫本レビューを書いてるのに、この方を
知らなかっただなんて恥ずかしい。
肝心の猫描写。
これがねぇ、もうなんて言うかねぇ、
押し付けすぎずけれど謙遜しすぎもせず、
ものすごい良い距離感で猫を愛でている。
猫の親のつもりになっているわけでもなく、
だからと言って愛情の出し惜しみを
しているわけでもない。
自然体で猫を愛でている。
そして、約30年くらい前の文章なのに
はっとさせられることが多い。
そして、何と言っても
「戦時中の猫の様子」を
読めるのが興味深いんです。
猫や犬が「畜生」として扱われ、
今の「ワンちゃんニャンちゃん」風な扱いが
想像もできなかったであろうあの頃。
そんな頃、猫がいかにして
時代を生き抜いていたか。
・・・という様な物々しい話ではなくて、
戦時中でも可愛に可愛がられていた
猫の話が載ってます。
そういうとこに目をつけて
書いているから和むんだよなぁ。
奥さんにしか懐かない猫がいて、
それなものだから焼餅を焼いているだとか
今まで絶対に触らせてくれなかった猫が
初めてこないだ触らせてくれたものだから
私は今「ほのかな気分」だ、とか
和みまくりますよ。
薄くて軽い本なので、
バッグに入れて外出先でも
あなたのそばに。
もちろん枕元にもお茶の時間にも
あなたの邪魔はいたしません。
時代を感じさせない軽妙な文章と、
心から猫を愛した著者の心意気を
ぜひお楽しみください。
おかしなネコの物語
終戦直後、一尾の魚を夫婦二人とネコ一匹で分け合ったというほどネコ好きな著者。そんな著者の家には何十匹というネコがやってきた。「飼い主」ではなく、「同じ釜のメシを食う」仲間としてネコ達と付き合い、彼らをこよなく愛してきた著者が送る「十猫十色」の猫エッセイ。