第47回 雪の季節にぴったり「黒ねこのおきゃくさま」
こちらでは雪が降り始めました。
本格的な冬支度の時期ですねぇ。
お体にも気を付けて。
今回のえりかのコラムは
「黒ねこのおきゃくさま」のご紹介。
ごゆっくりご覧下さい。
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冬の、寒い寒い森の中。
雪が積もった森の中。
一匹の黒猫が歩いています。
そんな寒々しい表紙のこの絵本。
雪を踏む、さくさくという音まで
聞こえてきそうな色合い。
じっと見ていると、冷たい空気の
感覚までもが肌に表現される様です。
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この絵本の絵は、「寒さ」を
直に感じさせてくれる絵で、
そんな寒そうな絵本を、どうして
わざわざクソ寒くなるこの時期に
紹介するんだ余計寒くなるじゃないか、と
お思いの方&お怒りの方。
今のこの時期だから紹介するわけです。
寒さが身に染みてくるこの時期に、
目にも寒々しい表紙のこの絵本を。
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貧しいおじいさんがいました。
おじいさんは、土曜日の夕飯だけは
贅沢をすると決めています。
美味しいお肉と、ミルクにひたしたパン。
それがおじいさんの土曜日のご馳走。
そして今日がその土曜日。
おじいさんは夕飯が楽しみで
しかたありません。
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けど来ちゃうんです。
「黒ねこのおきゃくさま」が。
今までの前フリからして、
これからの展開は予想できますよね。
なので、それはあえて書きませんが
このおじいさんは相当良い人なわけです。
良い人すぎて、読んでるこっちが
ドキドキしてきちゃう程の良い人。
こんな良いじいさん、めったにいないぜ。
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寒さを感じさせていた絵が、だんだんと
温かさを帯びてくるのもこの頃から。
黒猫とじいさんのコラボ。
そのコラボがですねぇ、
なんともじんわり来るんです。
先程、この絵本を紹介するのも
この季節だからだ、と書きましたよね。
その意味が、この頃から段々と
分かっていただけると思います。
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まるで、心のストーブ。
道徳の教科書に載ってる様な
おじいさんの良い人ぶりと、
黒猫のザ・猫っぷりに、なんだか
だんだん胸の芯があったかくなって
くるのを感じます。
黒猫のお客さまに振り回されてるおじいさん。
だけど、それが楽しそうで幸せそうなおじいさん。
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まったく話はすっかり変わりますが、
ある裁判で、ちっとも反省してない被告に
裁判長が憤慨し、さださんの「償い」という曲を
聞いてみなさい、聞いて反省しなさい。と言ったという
話がありますが、「償い」という曲の代わりに
この絵本を与えてもよかったんじゃないか、と
思うほど、この絵本はこう、なんというか
人の心を温め、そしてしみじみとした気持ちに
させてくれるわけです。
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黒猫を飼ってる人に特におすすめですね。
黒猫が主役だから、という意味でもありますが、
絵がですね。黒猫120%。
黒猫の魅力全開。
読んでいると、きっとあなたのうちの
黒猫ちゃんに見えてきます。
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これからの季節、クリスマスプレゼントなんかにも
ぴったりなんじゃないかなぁ。
大人の鑑賞にも耐えうる物語と絵なので、
家族や友人への贈り物でも問題無し。
黒猫を飼っている方へのプレゼントにも
きっと喜ばれると思います。
額に入れて飾りたくなる絵本の絵なんて、
初めてかもしれません。
この季節。
心にすきま風が吹いたら、
ぜひこの絵本をどうぞ。
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黒ねこのおきゃくさま
冬の嵐の晩、貧しいひとり暮らしのおじいさんのもとに、一ぴきの黒ねこがやってきました。『こすずめのぼうけん』などの作品で知られるエインズワースが、BBCラジオ放送の子ども向け番組のために書いた物語です。全ページカラーの美しい挿絵が、物語を一層味わい深いものにしています。 次回は12月9日更新予定!次回も是非見てくださいね!