第74回 猫と作家の濃密な関係「作家の猫」
こんにちは。
春も過ぎかけ、次は初夏。
今年の春はどんな出会いが
ありましたでしょうか。
今回のえりかのコラムは
「作家の猫」のご紹介。
ごゆっくりご覧ください。
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この本はですねぇ、特に猫好きで
文学好きな方におすすめしたい一冊です。
じゃあただの猫好きには
おすすめできないのか、という声が
ありますが、いやいやそんな事はございません。
んー、でもねぇ。
読書が好きな人で、特に日本文学が
好きな人、しかも猫好きだったら、
その人にとってこの本は至高のものに
なると思うんですよ。
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日本、そして世界の文豪達が、
どの様にして猫と付き合っていたかを
描いている本なのですが、
これがまた文学好き、読書好き、
そして猫好きにはたまらん出来に
なっておりまして。
何がたまらんかと言うと、
まずその文豪の写真が載ってるんです。
そして、それが猫に関係している
ものであるという点。
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あの谷崎潤一郎が。
あの室生犀星が。
あのヘミングウェイが。
あの池波正太郎が。
まるで「あの」という連体詞が
枕詞のような方々が、猫と共に
一枚の写真にドーン。
名前も知ってるし、著作も
読んだことがあるけれど、
顔は知らないなぁ、という方、
意外に多いと思います。
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いやあ、才能が秀でている方々は、
味のあるお顔をされておりますよ。
そんな、超有名な方々が、
猫に相好を崩している写真。
これはたまらんですよね。
ほらねほらね。
猫好きプラス文学好きな人は
きっと今頃むきむきと興味を
そそられているのではないでしょうか。
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それからですねぇ、その文豪達が
猫について書いた一文も
載っているのですが、
それがまたたまらない。
たまらん。ビンビン来る。
幾多ある文章の中から、
よくぞそこを選んでくれた、という
ベストな文章で、それがもう
文学好きのハートにビンビン来ます。
もちろん、猫好きさんのハートも
刺激してしまうこの文章。
「猫」という一文字の生き物を、
なんと素晴らしい文字列で
紡ぐのでしょうか。
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ほんと洗練されててやたらとお洒落。
お洒落、と書くよりも「洒落ている」
「モダン」と書いた方が、よりしっくりと
くる感じの文章。
読み継がれてゆく作品を
書いた人の文章っていうのは、
まるで良くできた日本酒のように
するすると通っていきますね。
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それから、ネーミングセンス。
文豪達の写真、猫の写真、
文章の流れるようなセンスを楽しんでいると
猫の名前、という部分は見落としがちな
ところではあるかとは思いますが、
ここを見落とすなんてもったいない。
その文豪独特の個性が発揮された猫の名前。
それはとても微笑ましくあり、
ユーモラスであり、どこか文豪達を
身近に感じられる響きであり、
ここを楽しまずしてどこを、という
部分でありますので、皆様是非
注目して見てみて下さいね。
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チビ
とにかく、洒落た一冊です。
特に文学好きではない方でも、
本の雰囲気と猫の写真は
充分に楽しめると思いますよ。
楽しんだ後は、ぜひ彼らの著作を。
きっとあなたの世界が広がります。
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作家の猫
漱石の「吾輩」から、南方熊楠、谷崎潤一郎、藤田嗣治、大仏次郎、稲垣足穂、幸田文、池波正太郎、田村隆一、三島由紀夫、開高健、中島らもの「とらちゃん」まで、猫を愛した作家と作家に愛され、描かれた猫たちのアルバム。