第5回 あのかわいい小心猫の登場です。「ゆず」
ゆず本、読んでる方も多いのではないでしょうか。
今回は須藤真澄さんの「ゆず」のご紹介。エッセイ漫画です。
ゆず本はたくさんあるので、総合してご紹介したいと思います。
ではえりかのコラム5回目、ゆっくりご覧下さいね。
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「ゆず」とは、著者の須藤真澄さんの愛猫です。
友達の信ちゃんちで生まれた子猫のうち一匹を貰うことになった須藤さん。
動物を飼うのは初めてで、盛り上がりの果てに名前を先に決めてしまいました。
それが「ゆず」
アフリカの歌手、ユッスー・ンドゥールのファンで
鍋物が好きな須藤さんが考えた名前、「ゆず」
鍋物の薬味にゆずは無くてもいいけれど、あると無いとじゃ
喜び方が全然違う、そこんとこからとった「ゆず」
須藤さんと「ゆず」の生活は、ここから始まりました。
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薬味からつけられたゆず。
三年後、こいつは土鍋であったことが判明。
薬味なんて可愛いもんじゃなく、主役ですよ主役。
でも、そんなもんですよね、猫って主役。
どうしたって主役になっちゃうもんです。
生活の薬味というよりも、生活の主役。
大変でも、生活の主導権を握られても愛してやるしかない。
猫ってそういう生き物。
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さて、友達の信ちゃんちから引き取ってきたゆず。
小心者で結構おばか。脳みそコメツブ大。・・・と、須藤さんが書いております。
読んでいても、かなりの小心者だって分かります。
人にもあんまり懐かず、他の猫を見た日にゃしっぽがタワシ。
だけど、すぐ忘れてしまうこの脳みそ。
人間も猫も、どっかでバランスが取れてるものですねぇ。
小心者なのですが、嫌な事をすぐ忘れてしまうのでゆずの毎日はすごく楽しそう。
毎日外で遊んだり、狩りをしたり、いきいきとした姿が描かれています。
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ゆずと言えばお散歩。
ゆずと須藤さんは、二人で月夜をお散歩します。
ゆずは、一緒にお散歩できる猫なんです。
道を決めずにゆずの後をついて行き、ビールを飲み飲み月明かりの下を行けば
私はこんなところに住んでいたんだなぁと再確認するという須藤さん。
いいですねぇ。実にうらやましい。
室内飼いだから、とか、猫にもリードをつける、とか
そんな堅苦しいことは一切言わないただのお散歩。
猫が地図になるお散歩。
ゆずは、須藤さんと行く散歩の時は塀の上を歩かないそうです。
人間が歩く道路よりも、一段高くなっている部分、「ねこ道路」を
歩くんだそうです。人間にお付き合いをしてくれてるんですねぇ。
須藤さんもゆずに付き合っていろんなことをしてみます。
須藤さんとゆずにだけ許された夜のお散歩を
ゆず本では少しだけのぞいてみることができますよ。
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ゆずがとても愛おしく感じられるんです。
決して人懐こい猫というわけではないのですが
なんだか「しょうがないなぁ、この子は」の精神というか
見知った猫の様に愛おしく感じられる、というか。
単純な線で描かれているゆずが、可愛くて可愛くて、
小心者でも脳みそコメツブ大でもあばたもえくぼ。
何でしょうね、ゆず程身近に感じられる猫漫画の猫って珍しいですよ。
それはやっぱり日常の細かいところまで描き込める須藤さんの描写力や
少しの事でも見逃さない観察眼があればこそ。
最初に読んだ時は、あまりのゆずの情報量の多さに、
頭の中で整理しながら読み進んでました。
そして、大体ゆずの基本的な情報が把握できた頃。
もうその時には、次のゆず本を探して本屋にいる自分。
なんかね、クセになるんです。この小心猫っぷりが。
仲の良い親戚んちの猫を愛でているような感覚。
少なくとも、紙の中だけに留まっているような猫じゃありません。
紙の中だけに留まらせておくような須藤さんじゃありません。
紙の中に居たはずのゆずが、いつの間にかあなたの心の中で
跳びはねている感覚、あなたにもきっと訪れます。
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あなたもゆずを愛でてみませんか。
ゆず、いい仕事しまっせ。
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さて、次回の予告。
次回は4月16日更新、須藤真澄さんの「長い長いさんぽ」
次回もぜひ見てくださいね!
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