第2回 己の姿が見えてきます。「獣医ドリトル」
えりかのコラム第二回は「獣医ドリトル」
いわゆる、獣医さん漫画です。
ちょっと待て、それは猫漫画なのか?と思われる方もいるでしょう。
ええ、獣医さん漫画ですとも。
獣医さん漫画なので猫のこと専門ではありませんが、
きちんと猫のお話が載っていますとも。それも濃いのが。
猫のお話を改めて紹介しますと、獣医ドリトル第一巻には
「キレるペット」、「ペットロス症候群」、第二巻には「リセット」
第三巻には「夢の行方」というお話が載っています。
どうです、題名を見てみると興味が出てくるでしょう。



主人公の獣医、鳥取(以下、ドリトル)を一言で言うと、「獣医版ブラックジャック」
やはり法外な治療費を請求し、払えぬ者は帰れ、そして口癖は「阿呆」
治療の腕は一級品ですが、性格はお世辞にも良いと言えないという、
絵に描いたようなブラックジャックぶり。
そんな獣医VS頑固一徹な飼い主達の一騎打ち。
これは見応えがありますぜ。



そうなんです。
この漫画に出てくる飼い主達はですね、揃いも揃って頑固者揃いなんです。
年齢性別問わず。必ずドリトルに歯向かってきます。必ずです。
例えばですね、1+1=2、じゃないですか。それを告げるとですね、
「なにっ!?そんなことは無い!1+1=3である!間違っているのはそっちであーる」
と、物凄い拒絶ぶり。
思い込みが強すぎるというか、自分の信念を持ちすぎだというか。
そんな飼い主達を、ドリトルが見事に改心させます。



「キレるペット」では、凶暴な、人に噛みつくペットの猫を
それで良しとする飼い主が出てきます。彼の言い分はこう。
「こいつは野生の獣だ。くだらない人間の作ったルールには縛られない」
彼自身も金持ちのおぼっちゃまで、金ならいくらでも出せると言いますが、
ドリトルは時給500円、住み込みで雑用をこなし治療費を稼ぐ以外は認めない、と
言い放ちます。これで彼と猫の何が変わるかは、読んでのお楽しみ。

「ペットロス症候群」では猫を事故で亡くした小学生の男の子が出てきます。
学校帰りに車にはねられた野良猫を見つけた彼は、雨の中、傘もささずに
その猫を抱えてドリトルの元へ駆け込みます。手術は成功し、猫も元気になりますが、
この男の子は野良猫を前に飼っていた猫と同じ名前をつけて、自分で飼おうとします。
そうは簡単に問屋が卸してはくれませんがね。

二巻「リセット」では、高層マンションの上階から落ちてしまい、昏睡から覚めない猫を
介護する少年を描きます。一生懸命オムツを変えたり、猫に語りかける少年を見て、
少年のお父さんは、新しい猫を買って全てを元に戻そうとします。少年が可哀相と。
何の反応もしない猫に一生懸命になってもどうしようもない、さっさと見切りをつけて
いれば今頃こんな生活はしていないと。題名の「リセット」、このことなんです。
たったの四文字が、哀しく響くでしょう?

三巻「夢の行方」では、獣医になりたいと受験に取り組み、周りと自分が
見えなくなっている女の子が、子猫を拾ってしまいます。
その子猫を、事もあろうに鳥取動物病院(ドリトルの病院)に
置き手紙と共に置いていってしまうのです。あな恐ろしや・・・。
ドリトルは女の子に電話をかけますが、「あたしはわざわざ猫を拾って
助けてあげたんだから、後はあんた達が治すべき!」とくってかかります。
それに対してのドリトルの言葉。ハッとしました。ほんと、その後が大切なんですよね。
何と言ったかは、どうぞ読んでみてください。
焦らしているわけではないですが、そちらの方が心に染みいると思いますので。うん。

もうお気づきになっている方もいらっしゃると思いますが、
この漫画では、動物・猫というよりも、それを通して「人間」を描いているんですね。
動物に対する人間のエゴ、思い上がりなどを直球で描いています。
猫のお話以外でも、犬・鳥・ウサギ・イルカ・フェレット・ハムスター等々が
出てきますが、その飼い主の中に「己」がいるんです。
己の、エゴや思い上がりが見えてきます。もちろん、この漫画に書いてあること、
ドリトルの言っていること全てが正しいとは言いません。
ペットを飼う行為自体がエゴだ、との声も聞こえてきます。
しかし、間違いなく描かれた飼い主の中に、己がいます。
己のエゴが増大された姿があります。

近年、ペットを飼う人のマナー違反が目立ちはじめてきています。
猫の話だけではありませんが、ノーリード、ペット禁止住宅での飼育、躾問題etc。
ノーリード飼い主の大半は「この子は大丈夫」と言い、ペット禁止住宅での飼育者は
「見つからなければ、迷惑をかけなければいい」と言います。言語道断、傍若無人。
その行為のツケは、全てペットにまわってくるということを
ちゃんと考えているのでしょうか。
そんな飼い主にぜひ読ませたいこの獣医ドリトル。
もちろんステキな飼い主のみなさんにも読んでほしい獣医ドリトル。
己の姿が、見えてきますよ。

次回は3月5日更新予定!次回も是非見てくださいね!