第68回 あなたという猫「私という猫」
皆様、寒さにも負けずに
元気にしておられますでしょうか。
09年第二回目のえりかのコラムです。
今回は「私という猫」のご紹介。
ごゆっくりご覧ください。
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前に、「猫が人間になったら」という
テーマでイラストを描いたことがありました。
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「猫が人間になったら」というテーマは、
メディアではよーく使われますね。
人間になる、という
はっきりした形ではなくても、
猫を擬人化させたり
人間語を喋らせたり、
猫を人間に近くすることは
猫メディアの常套手段。
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いっぱいありますよね。
古きから新しきから、
猫を人間に近づけている作品を
探すのに苦労はしない程。
けど、その反対って
なかなか見ないわけで。
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その反対=「人間が猫になったら」
題名から理解できる通り、
「私という猫」というこの本は、
「人間が猫になったら」という
ifをリアルに描いたコミック本。
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その猫を主人公に描かれるのは、
紛れもない野良猫の世界。
猫の世界を、これだけ硬派に
描き表しているものも、今までに
あんまり無いんじゃないでしょうか。
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セリフがいちいちかっこよかったり、
それに対する絵がかっこよかったり、
なんかこう、描かれてる猫に対して
「ステキ」という、人間が猫に対して
抱くなんてあるまじき感情を
抱いてしまうほどのかっこよさ。
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「かっこいい」という言葉は、
ちょっと似つかわしくないかも
しれないなぁ。なんか、ミーハーに
聞こえるかもしれないなぁ。
そう思わせる程のハードで高潔な
雰囲気と、セリフのセンスの良さ。
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猫に対して幻想ばっかり抱いている、
夢見がちでねこだーいすきっ☆な方達は、
きっと1ページ目で撃沈されるでしょうね。
「あー ねこだ」
「ねこはいいなぁ気楽で」
「寝てばっかだもんね」
「ねこになりたいよー」
という、二人組みの猫萌え会話を
聞きながら「私」が思うこと。
「もしも私が猫だったらば」
もしも私が、あなたが猫だったら。
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だーいすきなママに
いっぱいおいしいご飯をもらってる?
いつも優しいパパに
飽きるまで遊んでもらってる?
「もしも私が猫だったらば
とっくに死んでいる」
この漫画は、ここから始まります。
「飼われ」のわけがない立派な野良。
別に自由を愛するわけじゃない。
親が野良だし引き続き野良。
何の特徴も無い平凡な日本猫。
人間が思いつく一切のドラマ性を
排除して考えた「私という猫」
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後半は、その猫を主人公にして
野良猫の「半径5メートルの世界」を
描いていくわけです。
「猫」という動物を冷静に、
けれど情熱的に見ていないと
こういう話は描けないと思いますね。
大抵の人は、冷静に見ているか
情熱的に見ているかのどちらかで、
その中間で見ている人って
案外少ないんじゃないかと思うわけで。
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猫の「怒」の表情を描くのが
これだけうまい人って、
いろんな猫の本を読んできたけど
そうそういないですよ。
見てみたい方は、ぜひ表紙をどうぞ。
こんなに警戒してる猫を表紙に
持ってきてる本はなかなか見ませんよ。
あの表紙を見てピンと来たら、
即購入をおすすめします。
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