第71回 怖くないです「伊藤潤二の猫日記よん&むー」
すっかり春めいてきました。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
風が柔らかくなる季節ですが、
まだまだ朝夕は冷え込みます。
油断せぬようお過ごしくださいね。
今回のえりかのコラムは
「伊藤潤二の猫日記よん&むー」の
ご紹介。ごゆっくりご覧ください。
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目は肥えてると自負してました。
猫写真に関する目は肥えてると
自惚れてたんです。
だって、ここネコジルシで
毎日々いろーんな猫の画像を
見させてもらってるんです。
そりゃ目も肥えたと思っちゃいますよね。
もうどんな「変な顔」と題されてる
猫の画像でも驚かない自信はありました。
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むしろその変な顔が可愛いじゃないの、
どんな猫でもどんとこい的な
自信はあったわけです。
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毎日ネコジルシで猫画像を見続け、
家に居れば猫の写真集を見続け、
外に出れば野良猫のナイスショットを
狙い続け、日々そんな感じで
生きてるので猫に関する目は
肥えてます、と自負する私が、
見た瞬間に「なんだこれは」と
つい声に出してしまった猫。
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この猫が、今回紹介する漫画に
出てきますからねぇ。
いやほんと、飼い主さんの
心情を思うと何と言えばいいのか
ちょっとアレなのですが、
かなりレアなお顔の猫さんなのでは
ないでしょうか。
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で、その飼い主さんというのが
言わずと知れた伊藤潤二さん。
日本ホラーの第一人者、
伊藤潤二さんです。
伊藤潤二さんが飼っている猫2匹。
その猫達と婚約者との生活を描いた、
題名通りの猫日記。
これだけ書くと、なんだか
ほのぼのとした雰囲気ですよねぇ。
でも猫だったら大抵は
ほのぼのになると思ったら
大間違い。
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伊藤潤二さんの作風を
ご存知の方なら話が早い。
知らない方は、とりあえず
日本の古き良き時代の恐怖漫画の
絵柄を思い浮かべていただけると
話が早くなりますのでね。
絵柄があのまんまですが、
内容は怖くないんです。
けど絵柄があのまんまなんです。
でも、猫はですね。
比較的可愛く描いてるわけです。
でも婚約者のA子さんは白目で
作者本人は目の下のクマが
凄いわけです。
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猫も、「可愛い」と書きましたが
人間の描き様に比べて可愛いと
言うだけで、潤二的に不気味に
描かれてもいるわけです。
けれどそれが猫に適用されてしまうと
ギャグ漫画的な描写になるのは
何故なんでしょうか。
正直、猫漫画で声を出して
笑ったのはこの漫画が初めてです。
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呪い顔の猫・よんと、
長毛種の仔猫、むー。
この「よん」がですね。
先に書いてた「なんだこれは」の
猫なわけです。
作中で散々「呪い顔」だの
「変な顔」だの書かれて
いたのですが、
「変な顔ったってどうせ可愛いんだろ
見慣れてんだよこっちは」と
思ってたわけです。
「どうせ『変な顔』って
言いたいだけなんだろ」と
正直思ってたわけです。
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それがですねぇ。
こういう猫漫画って、
途中で猫写真のコーナーが
あるじゃないですか。
作中に出てくる猫を実写で
紹介するコーナーが
あるじゃないですか。
そこで、ある一枚の
「よん」の画像を見た瞬間。
もうほんと潤二先生ごめんなさい。
紛れもなく変な顔でした。
ほんとごめんなさい。
謝ります。
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いやー、笑える作品でした。
この作品の「ひとコマの力」って
すごいですよ。
猫好きで潤二先生関連が
好きな方には、ぜひ読んで
いただきたい。
もちろん、ただの猫好きさん
にもおすすめですよー。
絵柄はあのまんまですが。
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伊藤潤二の猫日記よん&むー
日本のホラー漫画界を代表する作家・伊藤潤二=ホラー漫画家J。犬派だったJは、婚約者A子の希望で猫を飼うことに。外国種の仔猫・むーと、呪い顔の甘えん坊猫・よん。Jの想いとは裏腹に、猫はまったくJには懐かない。・・・・ガンバレ、J!