第34回 シニカルな猫物語「ジャクソンねこのほんとうの家」
こんにちは。
夏の足音が聞こえだした今日この頃、
半袖を着ている方も増えてきましたね。
さて、今回のえりかのコラムは
「ジャクソンねこのほんとうの家」の
ご紹介です。ごゆっくりご覧下さい。
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私達は、猫にどんなイメージを持っているのでしょうか。
ちょっとですね。
「猫のイメージ」でネット検索してみました。
・何を考えているのか分からない。
・自由奔放で自己中心的。
・マイペース
・ミステリアス
・わがまま
・クール
・誇り高い
・気まぐれで身勝手
などなど、きりが無いくらいに出てくる猫のイメージ。
読んでいて気が付くでしょうか。
その殆どが、マイナスのイメージで使われている
言葉達なんです。
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「ミステリアス」や「誇り高い」などは、
まあ、良いイメージで使われますが、
あとはもう言いたい放題。
褒め言葉では絶対使わないな、というものばかり。
そこんとこがいいんだよ、と猫好きは言います。
しかし、猫好きは猫が好きなあまり、
上記の猫が猫であるべき部分を、
自分に都合のいいように解釈してしまうと
いう悪癖があるわけです。
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そんな猫好きの痛いところを突くこの作品。
以前にご紹介した「猫語の教科書」に続いて
「猫好きを困らせる二大巨頭」として
自信を持っておすすめできます。
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人間の家族が、みーんな出ていってしまった
猫のマリリン。ひとりぼっちになりました。
マリリンは、今まで人間の家族に
たくさん可愛がられてきたものですから、
ひとりぼっちになってしまっても
生きていく術を知りません。
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そこで頼るは隣家の猫。
黒猫ジャクソンてす。
ジャクソンは、
とんでもないのにつかまってしまったという
憂鬱を感じながらも、マリリンに、一匹の猫として
立派に人間をだまくらかして生きていく術を教えるのです。
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このマリリン。猫好きの理想の猫。
わがままであつかましく、陽気でちょっとおばか。
周りをちょっと見回してみると、そういうやつが
のほほんと昼寝を決め込んでたりしてませんか。
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そしてジャクソンは賢く、シニカルで
人間を巧く利用して生きている猫。
けれど、そういうことを自慢せずに
本当に上手く生きている猫。
「かわいい」という言葉をあてがうには
少し気後れする猫です。
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この本ね、児童文学なんです。
児童文学らしく、漢字もあまり使われてなく、
文字もそれなりに大きいサイズです。
そんなページの雰囲気に似つかわしくない
人間への皮肉たっぷりの内容。
それをうまく物語の雰囲気に包み込んで
書いているので、胸が悪くなるということは
ありません。児童文学の皮をまとった
風刺物語というところでしょうか。
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本当は私達なんて、猫の手のひらで
遊ばれてるだけなんじゃないかと。
「かわいい」と言われてるのは
私達人間なんじゃないかと。
「猫語の教科書」と合わせて読むと
一層、そう感じることができますよ。
でもやっぱり、猫はそこんとこがいいんだなぁ。
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ジャクソン猫のほんとうの家
6月のある日。家族に置いてきぼりをくらったと大騒ぎして、ジャクソンに助けを求めた小さなめすねこのマリリンは、しぶしぶ相手をしてくれたジャクソンから、今まで知らなかったいろいろなことを教わります。
次回は6月10日更新予定!次回も是非見てくださいね!