第10回 紳士な猫です「パロン・猫の男爵」
えりかのコラム10回目です。
とうとう連載回数が2ケタになりました!
これもひとえに、ご覧いただいている皆様方のおかげです。
こんな拙いコラムを見ていただいて、
あまつさえコメントまで下さるなんて、光栄の至りの極地でございます。
これからも精進していこうと思っていますので、
どうぞ見限らずにお付き合いいただれば幸いです。
さて、記念すべき10回目の題材は「バロン」
「バロン猫の男爵」です。
では、ごゆっくりどうぞ。
この作者さん、柊あおいさん。
どうして猫を主役にしたのでしようか。
主役だけじゃなく、登場キャラの90%が猫なんです。
あ、それを考える前に、ストーリーを紹介しましょうか。
主人公は人間の女の子、ハル。
下校途中に一匹の猫を助けたことからお話は始まります。
その助けた猫は猫の国の王、猫王(みょうおう)の子息、
つまり猫の国の王子様。その夜、ハルの元に使いの猫がやってきます。
王子を助けてくれたお礼として、明日から良いことが起きるという
使いの猫。その日からハルの身にいろいろと不思議なことが起きたあげくに、
最後には、ハルを王子様の妃に迎えたいという使いの猫の言葉に、
ハルは少し乗り気な返答をしてしまいます。
これがまずかった。
まあ、リアルの人生においても、こんなことは往々にしてありますよね。
適当な生返事をしていたら結構深刻な話で、気が付いたらいろんな約束を
取り付けられていた、とか。人の話はしっかり聞くに限りますよね。うん。
脱線した話を元に戻しまして。
乗り気な返答を聞いた使いの猫は大喜び。
近々迎えにあがります、との言葉を残して姿を消します。
どうしようどうしようと呆然としてみても後の祭り。
このままでは確実に猫と結婚させられてしまいます。
しかし、その時聞こえてきたのが不思議な声。
「猫の事務所へ行って!」
さあ、ここから冒険は始まります。
さて、どうして猫を主役にしたのか、に戻りましょうか。
「猫」っていう字、そして「猫」って、不思議な感じがしませんか。
どんな言葉と合わせてもしっくりと、神秘的に馴染みます。
猫という存在も一緒ですよね。
神秘的で美しく、その空間や空気に馴染むというか。
そのくせ、猫が一匹いるだけでその場の雰囲気がガラリと変わり、
まさに絵になる風景になりますよね。それでいて、空気の流れを壊さない。
「馴染む」というわけです。
この本の題名に「事務所」という言葉がありますね。
事務所、という言葉だけでは、殺伐とした無味乾燥的な印象がありますが
「○○の事務所」という風に前に何か動物の名前を付けてみましょうか。
犬の事務所。
うーん。なんだか堅い感じだな。
それに、どっちかっていうと児童文学向けの雰囲気だな。
ねずみの事務所。
ちっちゃいちっちゃい。
絵本向けな感じ。
鳥の事務所。
どっかの宅急便を連想しますね。
犬もねずみも鳥も、その他の動物も、なんだかいまいちしっくり来ない。
子ども向けの絵本ならいいけれど、大人が読むには雰囲気が足りない。
そこで猫の出番です。
猫の事務所。
どうですか。なんだかはいからな、それでいてシックでモダンな、
大人に足りうる感じにはなりませんでしょうか。
猫の事務所には、紳士が似合います。
そしてこの本の猫の事務所には、猫の紳士がいるのです。
フンベルト・フォン・ジッキンゲン男爵。男爵(バロン)。
これがまたかっこいい。こういう少しキザなかっこよさって
猫じゃなきゃしっくりこないような気がします。
猫を、いや、猫に限らず、動物を擬人化させた絵っていうのは、
よっぽど巧く描かないといまいち可愛くなかったりするものなんですが、
バロンはその擬人化の絵の技術も、まとわせた雰囲気も一級品です。
結局のところ主人公であるハルとバロン、そして様々なキャラクターと共に
猫の国からの脱出を目指すという物語なんです。
単純なファンタジーストーリーですが、ファンタジーものに付き物な
難しい言い回しや複雑な設定があまり無いので、いろんな年齢層の方が
楽しめるお話だと思います。最近のファンタジーはまどろっこしくて
いけねーや、とお思いの方に特におすすめ。サッと始まってパッと終わります。
バロンに負けず劣らずの登場キャラ達も魅力的です。
でっかくて白い猫、ムタさん。猫の国の王、猫王様。
そして、カササギという種別の鳥トト。
ファンタジー好きで動物、とりわけ猫が好きな人にはたまらない内容です。
余談ですが、猫王様、結構好きです。
敵か味方かで区別をすると敵なのですが、この猫王様、どうも憎めない。
やる事なす事ほとんど裏目に出るこの猫王様の愛らしさを愛でるだけでも
この本を読む価値はありますよw
気障で素敵な猫の男爵、バロン。
人では無いモノに魅せられるのも、また一興。
次回は6月25日更新予定!次回も是非見てくださいね!